風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その33 第六章陽炎⑤

美少年愛好クラブの集会で暴行されジュールに保護されたセルジュ。 何事かと出て来たロスマリネは暗闇の中で血の匂いを嗅いで気分が悪くなりそうでした。 まだ電気は普及してない時代ですから夜ともなれば闇の深さは現代人には計り知れません。 蝋燭の灯り…

風と木の詩その32 第六章陽炎④

さて美少年愛好クラブの会合にのこのこ顔を出してしまったセルジュですが、もちろんこれは誰かの罠です。 「珍しい黒い果実」だなどとセルジュの肌の色を揶揄して貶めようとする悪意を持った第三者。 こういう卑怯者はどうせ面と向かって言えないんだから無…

風と木の詩その31 第六章陽炎③

その日、オーギュストが学院を訪問して来た事を知るとジルベールはセルジュの前から走り去ってしまいました。 ジルベールが焦がれるように待ち続ける人、オーギュスト・ボウ。 その切ない気持ちに気付きながら、セルジュは皮肉にもオーギュストの計らいで従…

風と木の詩その30 第六章陽炎②

青春の時がゆっくりと、だが確実に過ぎ去って行きます。 そんな止める事のできない時間の流れの中で、激しく熱くピアノに身をゆだねるセルジュの姿がありました。 セルジュのピアノは彼の思いのはけ口。己の叫びを音にして、彼の心の動きがまさに響いてくる…

風と木の詩その29 第六章陽炎①

さて、物語の舞台は再びラコンブラード学院に戻って来ましたが、前どんな話だったか覚えてる? セルジュに興味を抱いたオーギュスト・ボウに夕食に招待されしょうがなく行ったら、嫉妬したジルベールがぷんすかで「おまえなんか憎んでやる!」とか言ったんじ…

風と木の詩その28 第六章の前にこれまでのおさらい

こんにちは、akです。 気まぐれ更新の風と木の詩ですが、現在はこの物語はちょうど折り返し地点の辺りまで参りました。 さて、次なる第六章では舞台は再びラコンブラード学院に戻ります。 その前にちょっとこれまでを振り返ってみませう。 これまでのざっく…

風と木の詩その27 第五章セルジュ⑥

まるで導かれるようにアスランのピアノの前に立ったセルジュ。そのピアノを弾く事によってセルジュの深い悲しみは次第に癒されたのです。子爵家の後見人の肩書を得た伯母は、派手な社交パーティーを開催するようになりました。サロンの評判というのは女主人…

風と木の詩その26 第五章セルジュ⑤

父が亡くなり、祖父も去ると、セルジュは母と二人きりになりました。 やがて冬が訪れる頃になると、母はよく寝込むようになっていました。 セルジュにはお腹に赤ちゃんがいると嘘をついていましたが、結核に感染していたのです。 アスランのお父さんも亡く…

風と木の詩その25 第五章セルジュ④

───あれから二年の歳月が立ちました。アスランは父親になっていましたアスランはパイヴァと共にチロルの山村で暮らしていました。かつて、病気と闘うアスランの命をよみがえらせてくれた山々に見守られ、息子のセルジュを授かっていました。アスランはもうす…

風と木の詩その24 第五章セルジュ③

娼婦であるパイヴァと恋に落ちたアスラン。アスランはこの時18歳。父親のバトゥール子爵からパリの屋敷を譲られたばかりで、来年は大学に入学し、いずれは父の跡を継ぐ、その前途は洋々たるものでした。パイヴァは17歳でしたが、社交界の大物をパトロンに持…

風と木の詩その23 第五章セルジュ②

1865年10月。18歳のアスランはパリの屋敷を正式に相続しました。かわいいだんな様だね~この若すぎる当主に周囲からは不安の声もありました。でもアスランのお父さんは、優秀だけどいい子過ぎて世間ずれもしてない息子に、早くしっかりして欲しかったんじゃ…

風と木の詩その22 第五章セルジュ①

さて、今回からセルジュ編です。風と木の詩の主人公はジルベールだと思われてますが、主人公はセルジュです。セルジュは貴族なのに浅黒い肌を持つ、正義感の強い真っ直ぐな心の少年でした。セルジュはどんな幼少期を過ごしたのでしょうか?その前にセルジュ…

風と木の詩その21 第四章ジルベール⑨

三階の窓から身を投げたジルベールは、ボナールが危険を覚悟で受け止めたのと、下に枯れ葉の山があった幸運でなんとか命をとりとめはしました。しかしながらジルベールはショック症状で意識を失ったまま戻らず、ボナールも怪我を負ってしまったのです。ボナ…

風と木の詩その20 第四章ジルベール⑧

ジルベールはもう屋敷には戻ろうとはせず、ボナールの所で厄介になっていました。ソドミアンだという事をおおっぴらにしているボナールは、地位や名声には目もくれず、自分の生きたいように生きている人なんでしょうね。たとえソドミアンだと周囲から糾弾さ…

風と木の詩その19 第四章ジルベール⑦

オーギュが結婚?オーギュストが結婚する、という噂話を立ち聞きしてしまったジルベールは、とてもショックを受けます。あくまでも噂話なんだけどね。しかしジルベールにとっては、オーギュストが誰かに奪い取られてしまうようで、とても我慢できない事でし…

風と木の詩その18 第四章ジルベール⑥

1877年夏。オーギュストとジルベールはパリにやって来ました。パリの華やかさにワクワクするジルベール19世紀半ばまでは、パリの住民は信じられない事に汚水や生ゴミや排泄物などを道路に捨ててたそうで、パリは臭くて汚い不衛生な街でした。コレラなんかも…

風と木の詩その17 第四章 ジルベール⑤

海の天使(ケルビム・デ・ラメール)城 1877年、ジルベール10歳 知る前は怖いけど知ってしまえば、なあんだって思うもの。 それは性。 すべてを知り尽くしてるジルベールにとっては、大人への恐れなど何ほどの事もありません。 純真な子供の振りをするアンフ…

風と木の詩その16 第四章ジルベール④

まだ子供だっていうのに、恐ろしい事にボナールにレイプされショックで放心状態のジルベール。憐れな姿で戻って来たジルベールにオーギュストの態度は冷たい。あんまりだこの最悪の事態は予定調和でしょう。ボナールは危険だと執事も危ぶんでいたのに、警戒…

風と木の詩その15 第四章 ジルベール③

ジャン・ピエール・ボナール男爵は彫刻家であり、ショタが好きな男色家です。ジルベールがオーギュストに逆らい当主の権限で滞在を許してしまった為に、この危険な男はジルベールに熱中して付きっきりになります。子供を扱うのも上手いのかもしれない。乗馬…

風と木の詩その14 第四章 ジルベール②

1874年、この年ジルベールは7歳になりました。絢爛豪華な海の天使城で、寝たい時寝て起きたい時に起き、衣服もろくに着けず動物のように自堕落に暮らしていました。生まれてから誰にもかえりみられる事のなかったジルベールにとって、初めて出来た家族(と言…

風と木の詩その13 第四章 ジルベール①

作者の過去のインタビューなど読みますと、連載当初ジルベールは読者から嫌われてしまったらしいですな。わがまま過ぎるとか、自由奔放過ぎるとか言われて。なんかわかるわ。風と木の詩はセルジュを主人公に据えてますが、作者が心底描きたかったキャラクタ…

風と木の詩その12 第三章 SANCTUS聖なるかな④

19世紀末のフランス。ジプシーの血をひき褐色の肌を持つ少年セルジュは、アルル地方にある名門男子校ラコンブラード学院に編入します。寮で同室になった少年ジルベールは、類い稀な美しさと自由過ぎる魂を持ち、まるで男娼のような暮らしを送っているのでし…

風と木の詩その11 第三章 SANCTUS聖なるかな③

カトリックには「告解」というシステムがあります。自分が犯した罪を神に告白して許しを得るものです。実際は司祭に告白するわけだけど、顔見知りだったりとかしたら、ちょっと言いづらかったりしないのだろうか。一応顔が見えないような工夫がしてあるらし…

風と木の詩その10 第三章 SANCTUS 聖なるかな②

さて、クリスマス休暇も終わり新学期が始まりましたよ。春の気配が感じられる日が多くなると、まるで何事もなかったかのように日常が戻ってきます。馬術の授業風景ラコンブラード学院では馬術の他に、フェンシングやフットボールなんかもやっていますね。け…

風と木の詩その9 第三章 SANCTUS 聖なるかな①

SANCTUS(サンクトゥス)とはミサ曲です。聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな万軍の主なる神主の栄光は天地に満てりいと高きところに ホザンナ作者はウィーン少年合唱団のファンでした。あの天使の歌声を思いだしてみよう!第三章 SANCTUS━聖なるかな━はじま…

風と木の詩その8 第二章 青春⑤

クリスマス休暇にパスカルの家に招待されたセルジュは列車でリヨンまでやって来ました。今から列車に乗れば夕食には間に合うぞ、とパスカルが言っていたのでラコンブラード学院とリヨンはそれほど離れていない模様。ラテン語の得意な優等生を招待した、とパ…

風と木の詩その7 第二章 青春④

さて、季節は冬。ラコンブラード学院ではクリスマス休暇の前の冬期試験が始まりました。上級生も下級生もこの時ばかりはおとなしく図書室や自習室にこもって勉強にいそしみます。セルジュも今までは家庭教師についていたので学校の勉強とはズレがあって遅れ…

風と木の詩その6 第二章 青春③

セルジュがリリアスから呼び出された温室で怪我を負い意識を失ってしまった時から一日半ののち────。ジルベールは何事もなかったかのようにフェンシングの授業に出ていました。セルジュは一日半医務室で過ごしてから授業に顔を出してジルベールを見つけます…

風と木の詩その5 第二章 青春②

学院の外出日にジルベールが原因でクルトと取っ組み合いのけんかになってしまったセルジュ。クルトは絶交を宣言し怒って帰ってしまうし月に一度の外出日は台無しになっちゃいました。カールはとりあえず自分の下宿にセルジュを連れて行き傷の手当てをしてや…

風と木の詩その4 第二章 青春①

第二章 青春人里離れた山奥の名門学校ラコンブラード学院に多感な日々を過ごす少年たちのそれぞれの青春。はじまりはじまりさて学院に転入してきたセルジュがジルベールと同室になり運命的な出会いを果たす波乱の幕開けでしたが、セルジュはすぐに友人もでき…