風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その10 第三章 SANCTUS 聖なるかな②


さて、クリスマス休暇も終わり新学期が始まりましたよ。


春の気配が感じられる日が多くなると、まるで何事もなかったかのように日常が戻ってきます。




馬術の授業風景


ラコンブラード学院では馬術の他に、フェンシングやフットボールなんかもやっていますね。

けっこうスポーツが盛んなんですね。




そしてジルベールとセルジュはと言うと・・・




ジルベールは完全無視です。





ですがセルジュは、ジルベールと裸で抱き合って眠った一夜以来、自分の中に変化を感じていました。


ジルベールがまた、あのゲスな上級生マックス・ブロウとキスする所を見てしまったりすると、まるで自分が辱しめられてるような嫌な気持ちになってしまうのです。


そんな二人を生徒たちは好奇の目で見ていて、影で様々な噂をしています。


何れにしたって二人は人目を引く存在なのです。




セルジュの気も知らず白昼堂々と繰り広げられるラブシーン






廊下の影で、裏山で、もう人目も憚らずお盛んなわけですよ。


ほんとこの学校どうなっちゃってんの?








その頃、最上級生のいるA棟の寮でも噂話が持ち上がっていました。


ジルベールがブロウに毎日抱けって懇願したらしいという話。


その話題で上級生たちは盛り上がっています。


休暇中誰も抱いてやる者がなかったから飢えてるだとか、ブロウは腰が抜けるだろうとか、今ならなびきそうだから口説いてみるかとか。


もー好き勝手に言ってるわけ。
もしもセルジュがその場にいたら間違いなく怒りだすよね。





以前、ジルベールにはとてもエロいオーラが出ているんだと書きましたっけ。

そのエロさについその気にさせられてしまう、性的魅力の持ち主だと。

それに加えてジルベールは性行為では常に受け身なんです。



男なのに女として扱われています。


手足が細く華奢で女の子のような身体に描かれているだけでなく、生徒たちの彼への対応も置かれている状況も女なんだよね。
 

女が全くいない特殊な環境だから、性欲旺盛な若者たちムラムラが止まらんというのはわかる。



疑問なのは、ジルベールは結局は女の代用品としての性として扱われているのに、それがわかっていて次々と関係を結んでいく事なんです。


そして、暴力を受ける事が予想できるのにわざと相手を怒らせたりもします。


自分で自分を貶めよう痛めつけようとしてるみたいに。


それはまるで自傷行為のようで、どうしてそんな事をするのでしょうか。


恐らくセックスしてもセックスしても満たされないし、本当に気持ち良くなったりはしてないように思うんです。




「きみたち、人の噂はそれくらいにしたまえ」


ジュール・ド・フェリイが初登場!



上級生たちの心ない噂話をたしなめたのは、ロスマリネの幼なじみのジュールです。


彼の家は没落貴族で、ロスマリネの権限で学費免除してもらったり恩恵を受けています。


脇に控えながらも優美で品格がある人物です。


ジュールはロスマリネの部屋を訪ねますが、そこには先客がいました。





え?あれがオーギュスト・ボウ!

───驚くジュール


この時点ではまだ謎の人物であるオーギュスト・ボウは、ジルベールの叔父であり、ロスマリネさえ思うままに操るこの学院の実力者です。


二人の会話によればジルベールはこれまで自殺未遂を二回、町の浮浪者を挑発して暴行を幾度となく受けている。


つまりそれ相当の自虐的な行為によって例のショックから立ち直るのに、今回はなんの自虐行為もなく立ち直ってしまった。


おかしいじゃん。
誰かに受け止められたんじゃね。
と、言うオーギュストの言葉にセルジュの顔が浮かんでしまうロスマリネ。


でもでも仮にも子爵なんだけど、子爵ともあろう者がジルベールなんかと、まさかまさか・・ロスマリネ狼狽。


確かめたいから時間が欲しいと慎重なロスマリネに
「君が遠慮するなんて貴族の息子か、富豪の息子か?」
などとロスマリネが暗に権力に弱い事を冷やかして、オーギュストは部屋を出て行きました。


ロスマリネが思わずジュールに、あいつもジルベールも許し難い存在だとかき口説くと、ジュールは穏やかに「わかるよ」とうなずきます。


ジュールは常にポーカーフェイスです。





そして数日が過ぎて


町のホテルの一室でブロウに縛られるジルベール




うーん、もうね赤面。

なんか直視しづらいんですけど。

週刊少女コミックすごくね。

当時の読者もよく受け入れたよね。

まあタブーを破る事で面白くなるんだけれどね。





しかしSMを楽しんでる風ではなく、ジルベールに罵られて逆上したブロウが鞭で打擲します。

あまりの痛さに部屋の外へ逃げ出したジルベールが、偶然にもジュールに助けられるというね、なんかブロウ恥ずかしすぎるぞ。








もーみんな呆気にとられてフリーズしちゃってる。


学生の分際で町のホテルで密会とはね。








ジルベールを助けて傷の手当てをしてくれたジュール。


ジルベールはロスマリネが嫌いですから、彼の息のかかったジュールに警戒心を持っています。


ジュールはジルベールの気持ちを察して、以外な事を言い出します。


自分とロスマリネは友人ではないと言うのです。





ロスマリネは支配する者、ぼくは支配される者



そんな関係だったのは、はるかかなたの遠い昔の事だと。


人っていうのは、すべて自分の為にだけ行動するんだ。
無償の親切や犠牲的行動も結局は自己満足の為だ。
友情なんかじゃないんだよ、となんだか屈折した心理を語ったのです。





ジルベールは気に入ったようです。


いつも他人に対してはキツイ目をして相手を見下すジルベールですが、なぜかこの時は静かにジュールの話に耳を傾けていました。


二人の邂逅がジルベールに何か変化をもたらすのでしょうか。




さてこちらは陣取り合戦




ラコンブラード学院伝統の陣取り戦争は、もう何十年にも渡り学院の敷地内を取り合う歴史的な遊びです。


ルイ・レネ先生がアスランとの思い出話を楽しそうにしてくれます。



ルイ・レネ先生はけっこうお茶目




ルーシュ教授のレッスンが始まったセルジュですが、初めて聴いた時の冴えがないとルイ・レネ先生は一時心配していたのです。


心が揺れ動く時期だから、悩み事があったりすると微妙に音に出るようです。





悩み事っつーのはもちろんジルベール



ピアノを弾くセルジュの姿を窓から覗いているジルベール。

後ろから追いかけてきたじいさんに捕まります。

そのじいさんが音楽の先生の一人だったので、セルジュはおぞましい物を見てしまったかのようなショックを受けてしまいます。






ワッツ先生はセルジュの悩み事の正体に気づいているようです。


ルイ・レネ先生もワッツ先生も、かつて青春時代を共に過ごしたアスランの息子であるセルジュを、とても大事に思っているんですよね。




とは言うものの、心配をかけたくないのでしょう。


セルジュは意を決して聖堂へやって来ました。






いったいセルジュは何を懺悔するのでしょうか?