風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その28 第六章の前にこれまでのおさらい

 
こんにちは、akです。
 
 
気まぐれ更新の風と木の詩ですが、現在はこの物語はちょうど折り返し地点の辺りまで参りました。
 
 
さて、次なる第六章では舞台は再びラコンブラード学院に戻ります。
 
 
その前にちょっとこれまでを振り返ってみませう。
 
 
 
 

 
 
 
これまでのざっくりおさらい
 
 
風と木の詩の舞台は19世紀末のフランスでございます。
 
 
14歳の少年セルジュ・バトゥールが父の母校でもあるラコンブラード学院に編入してきます。
 
 
ラコンブラード学院は、アルル地方の人里離れた山の中に建つ名門男子校で、生徒総数1745名のうち約三分の二は寮生です。
 
 
寮はA棟、B棟、C棟の三つの建物から成り、A棟はA級生(16歳から19歳)B棟C棟はB級生(12歳から15歳)及びC級生(8歳から11歳)が混合されています。
 
 
つまり小学生位のお子ちゃまから、上は大学入学前の青春真っただ中の多感な少年たちが、うれし恥ずかし共同生活を送っているのです。
 
 
 
 

 
セルジュとジルベールの衝撃的な出会い
 
 
セルジュは貴族ですが褐色の肌を持っています。
 
 
彼は貴族の父がジプシーの血を引くパリの高級娼婦の母と駆け落ちして出来た子供なのです。
 
 
彼はその肌のせいで差別や偏見を受けますが、とても真っ直ぐで強い心の持ち主ですからへっちゃらです。
 
 
身分を超えて愛し合った両親と、母と同じ褐色の肌はセルジュの誇りでもあるのです。
 
 
 
 
 
セルジュは寮でジルベール・コクトーとルームメイトになります。
 
 
ジルベールは金髪で少女のような容姿を持つ類い稀な美貌の少年でした。
 
 
 
 
 
しかしジルベールは学院内で不特定多数と同性愛行為にふけり、まるで娼婦のような生活を送っている問題児だったのです。
 
 
お堅いB棟監督生のカールは、糞真面目にジルベールをまともにしてやろうなどと考えますが逆にジルベールの妖艶な魅力に落ちそうになります。
 
 
変わり者の万年落第生のパスカルは「ジルベールは自分の身体で人を測る。彼を捕まえて説得するには彼の皮膚を通りぬける以外方法はない」と言うのです。
 
 
ジルベールはセルジュが邪魔なので、乱暴者の上級生ドレンを使って部屋から追い出そうと画策しますがセルジュの毅然とした態度の前に失敗します。
 
 
セルジュは腹を立てながらもジルベールが気になるのでした。
 
 
 
 
 
 
ゲスな上級生ブロウの事など好きでもないくせに、彼に身を任せるジルベールの気持ちがセルジュにはわかりません。
 
 
そしてまるで自分を痛めつけようとするかのように、暴力を受けるのをわかっていながらわざと相手を怒らせるような事を言ったりもします。
 
 
ジルベールの細い身体はいつも傷だらけなのです。
 
 
自虐的な行動を繰り返し孤立するジルベールを気にかけセルジュは何度も友達になろうと誘います。
 
 
でもセルジュがいくら真正面からジルベールと向き合おうとしても相手にしようとはしません。
 
 
それどころか、とんでもないエロモードで誘惑してくるのです。
 
 
 
 
これは恋なのだろうか?
 
 
セルジュは強い正義感を持っている少年です。
 
 それはまるで、自分に課しているかのようにも思え、時々空気を読めないのは彼が信念の人だからなんです。
 
 
セルジュはジルベールにどんなに翻弄されても誠実であろうとし、彼を裏切るような事は決してしませんでした。
 
 
また彼を汚い物のように言って排斥しようとする態度にも否定的でした。
 
 
その為ジルベールをかばって友人と取っ組み合いのケンカになった事もあります。
 
 
皆どうしてそこまでするのか不思議でしたし、セルジュ自身も予想外の混乱した自分の感情に当惑していました。
 
 
その切なさも、戸惑いも、溢れる思いも男女のそれと何ら変わりませぬ。
 
人はそれを恋と呼ぶのだwww
 
 
 
 
 
セルジュがジルベールを放っとけなかったのは、セルジュ自信が孤独だった事もありますです。
 
 
セルジュはジルベールの中に自分と同じ孤独と誇りを見出すようになり、彼の心をもっと深く知りたいと願うようになります。
 
 
 
 
 
 学院に君臨する生徒総監白い王子ロスマリネ
 
 
 
 
思春期の多感な時期を親元から離れて寮生活を送る少年たち。
 
 
そこはとても閉鎖的で抑圧され色んな物が渦巻いています。
 
友情や憧れ、嫉妬、羨望、性への目覚め、少年たちの青春が息ずいています。
 
 
生徒に関する一切の権限を持つ生徒総監を務めるのが、白い王子の二つ名を持つロスマリネです。
 
 
その髪に触れてみたい(自分だけ?)ロスマリネ様は、学院の風紀を乱すジルベールに容赦ない鉄拳制裁を加えます。
 
 
プライドが高く異常なほどの潔癖症の彼とジルベールは実は親戚関係です。
 
 
なのに何かにつけてジルベールに対して激しい嫌悪感を見せます。
 
その理由は、謎の人物オーギュスト・ボウにあるようでした。
 
 
 
 
ジルベールの心を占める最愛の人オーギュ
 
ジルベールの叔父オーギュスト・ボウは表向きはパリで高名な詩人ですが、裏ではロスマリネを操る学院の影のドンです。
 
 
ジルベールを学院に隔離した張本人なのですが、精神的にも肉体的にもオーギュストに支配されているジルベールは彼に会いたくてたまらないのです。
 
 
クリスマス休暇にオーギュストに会える事を願い、彼からの手紙をひたすら待ち続けたジルベール。
 
 
でも意地悪なオーギュストは会いに来てくれませんでした。
 
 
 
 
憎しみで人が殺せたら───
 
 
殺したいほど憎んでいると言いながら愛しているのです。
 
 
その狂おしいほどの愛憎半ばする感情をセルジュは知らず、パスカルの招待でクリスマス休暇を彼の家で過ごします。
 
 
 
変人だけど頼れる友人パスカル
 
 
 
パスカルの家は子沢山で女の子ばかりなので、紳士的で誠実な態度で振る舞うセルジュは大歓迎されます。
 
パスカルは変わり者ですが、博識で好奇心旺盛なインテリです。
 
ジルベールの事で悩むセルジュにいつも的確なアドバイスをしてくれます。
 
 
パスカルといいカールといいセルジュは友人に恵まれています。
 
 
パスカルの妹パットとも出会いました。
 
 
 
抱いて!今夜ぼくと寝て!お願いだセルジュ
 
 
 

 
クリスマス休暇が終わり学院に戻ったセルジュを待っていたのは、別人のように儚げなジルベールでした。
 
 
まるで抜け殻のように虚ろなジルベールの様子にセルジュは戸惑いますが、ジルベールに自分を抱いて寝て欲しいと懇願されます。
 
 
セルジュは困惑しながらもジルベールを受け入れ、二人は一晩中裸で抱き合って眠ります。
(眠っただけよ)
 
 
セルジュに受け入れられたジルベールはまた普段通りに戻りますが、これが問題なのよね。
 
 
どうしてジルベールの心はこんなにも不安定なのか?
 
 
そして、ジルベールの変化に気づいたあのお方オーギュストがついにセルジュの前に現れます。
 
 
しかしオーギュストはジルベールの嫉妬を煽るように、わざと彼を無視してセルジュばかり誉めたり意味深長な態度を取ります。
 
 
オーギュストの関心がセルジュに向けられるのを恨み憎んだジルベールはセルジュに宣戦布告してくるのです。
 
 
一方的に憎まれたり、妖しげな叔父と甥の関係を見せられたり、ジルベールに翻弄されるセルジュ。
寮で同室になっただけなのに~
 



それは愛なのか?虐待なのか?

 
ジルベールの過去編では、10年前に遡りマルセイユの「海の天使城」を舞台に若く麗しいオーギュストと5歳のジルベールが登場しました。
 

新進気鋭の詩人で才能も美貌も持ち合わせ「薔薇色の人生」だと人からは羨望されるオーギュスト。
 

けれど彼の人生は誰にも話せない過去のトラウマによる、憎悪や孤独や自己嫌悪が混沌として虚無的な物となっていました。
 
 
 
 
 
 
彼は実はジルベールの叔父ではなく実の父親なのですが、もちろんジルベールは知りません。
 

オーギュストは倒錯した愛情でジルベールを性的な虜にし心まで離れられなくしていました。
 

ジルベールの自由奔放で破滅的な妖しい魅力は、親も知らず躾も教育も受けず野生動物のように自堕落に気まぐれに育てられたからなのです。
 



 ジルベールを愛し誇りを忘れるなと教えてくれた人

 


オーギュストのライバルみたいにしてボナールが登場した時は、小児性愛者の変態野郎だと思いました。


実際彼はまだ幼かったジルベールを誘拐して無理矢理淫らな行為に及びました。
幼児姦とか見たくなかった。


そんなボナールがジルベールに深い情愛を示したのは皮肉です。


ボナールはジルベールに「お前を守る武器は誇りだけだ。忘れるな」と諭します。


ボナール宅で暮らし段々健康的になっていくジルべールが好きでした。

オーギュストからの呪縛を解いてやろうと、決闘に持ち込むシーンもカッコ良かったですね。



アスランの青春 娼婦との恋 

セルジュの父であるアスラン・バトゥールはパリの高級娼婦パイヴァと恋に落ちます。


身分違いの恋に父からも友人からも反対されますが、アスランは将来を捨てて彼女と駆け落ちする道を選びます。
 



「椿姫」をオマージュした二人の恋物語は劇的で、これはこれで一つの作品として発表しても良かったんじゃないかと思うほどです。


二人はチロルで貧しいながらも幸せな家庭を築きセルジュを授かります。


しかしアスランは病に倒れて短い人生を終え、パイヴァもまたセルジュをバトゥール家に託し亡くなってしまいます。


慣れない貴族の生活や、独りぼっちの寂しさや、伯母のイジメにあいながらも、父のピアノを弾く事を慰めに成長していくセルジュ。


彼の孤独を癒してくれた従姉妹のアンジェリンは、事故で顔に火傷を負ってしまいセルジュは責任を感じて彼女と婚約しようとします。


けれど誇り高い彼女はそれを許さず、この家から出ていって欲しいと言われ、セルジュはラコンブラード学院へと旅立ちました。





────そう
アンジェリンへの愛は肉親への愛
誰にでもある自然の感情

────でも
ジルベールへの思いはどこまでも不自然で不安定で、それでいて確かなものでした

────それは陽炎のようにゆらめきたつ恋の炎だったかもしれない





第六章 陽炎


 
 始まり始まり拍手





学院は静けさに包まれ、どこかの教室からは聖書の授業の声が漏れてきます。


その頃ジルベールは、総監室の隣の客間に入り込み上級生のレオと同性愛行為に耽っていました。


レオはジルベールが最近美形揃いの総監側近を片っ端から誘惑している、という噂を聞いていました。


授業が終わったらしく外が賑やかになってくると、レオは身支度を始めジルベールに貸しを作りたくないからと紙幣を放ります。


ジルベールに金など無用の長物でしかありません。


ジルベールはその金に火をつけ、丁度窓の下を通りかかったジュールに向かって投げ捨てました。


 
 ジュールの麗しきご尊顔をば

「ガキっぽい悪戯はよせ、ロスマリネ」


ジュールにいたずらを仕掛けてくる者など、この学院の中でロスマリネしかおりませぬ。

ジュールはついロスマリネだと思い込みラフな言葉を使ってしまいます。



 ところが上にいたのはジルベール、しかもほとんど裸で


「やあ、きみか・・・降りておいで」


ジルベールはジュールを気に入っているようにも見えます。


ジュールはA棟監督生でジルベールの嫌いなロスマリネの幼なじみで参謀役で裏番長です。


ジルベールは、元気な男の子みたいに階段を音をさせて駆け降りてきました。




 エロさがだだもれ


いつもの事ですが、ジルベールがちゃんと服を着ている所はあまり見た事がありません。


ジュールが服をちゃんとしてって注意しますが、ジルベールは鼻で笑っちゃうのね。


チラ見せの乳首とかジルベールだから許されるけど、普通こんな人いたら頭へんなのかと思いますよ。


世間を賑わすジルベールだから、ちょっとジュールと立ち話した位で「ジルベールがジュールを口説いてるぞー」とかヒソヒソ言われちゃう。


ジュールは、ジルベールはロスマリネから何か聞き出したいのだろうと見抜いていました。


ほんとならロスマリネを誘惑したい所だけどそれは無理だから、片腕の自分に近づいてくるのだなって見破っています。


ジルベールは一体何を知りたがってるのか。


そこはねー、ジュールとジルベールの腹の探りあいでジュールも食えないのね。


自分はロスマリネの事が嫌いだなんて言ってくるから、ジルベールはジュールの真意を図りかねているのかもしれません。


ジュールはジルベールにせまられても全然動じず、さすがのジルベールの手練手管もジュールの方が一枚上手で、誘惑されませんな。


ロスマリネとずっと一緒にいるから美形は見慣れてるのかも笑