ご無沙汰しております。
いやー、夏休みに寮に残ったセルジュとジルベールが次第に心通わせていった前回。
ついに二人は結ばれるのかー!?
との期待をヨソにして二人だけの楽しい夏を過ごしてましたね。
今回は、なんだかちょっぴりサスペンスタッチなんでございます。
さて、ワッツ先生にフェンシングの相手をさせられてクタクタの二人です。
ここでひと悶着。
風呂嫌いのジルベールが嫌がるので、風呂に入る入らないで揉める。
セルジュは風呂に入らなきゃダメだと言います。
セルジュってお節介ババァみたいに自分の思い通りにしないと気がすまない所があるねー
とは、思わないでやって下さい。
そもそも人は風呂へ入らねばならぬという基本的な生活習慣がジルベールには出来てないのです。
そしてフリーダムすぎるジルベールは他人から指図される事を嫌います。
お付き合いするにはとても厄介な人だけど、セルジュは一生懸命なのです。
眼福でござる
なかなか浴室に入ってこないジルベールを見に行くと脱衣の最中。
明るい場所で見ると、見慣れたはずのジルベールの裸がセルジュの目に新鮮に映ります。
その華奢な身体についた無数の小さな傷跡までセルジュは美しいものに感じるのでした。
「・・・ほら、鏡のほうを向いてごらん」と、セルジュが言います。
身長差萌え
二人は身長差があるけど、確か①巻では同じくらいだったからセルジュは伸びたって言う事ね。
ジルベールの白い肌はさぞや美しいんだろね。
まるで光と影みたいだと言うセルジュの言葉にはジルベールの白い肌に恍惚とする姿が見て取れます。
人は少なからず自分にない物を求め惹かれるのですよね。
この後二人は素っ裸のまま同じ動きをする遊びに興じ、石鹸で足を滑らすセルジュを見てジルベールは大笑いします。
ジルベールが笑ったのでうれしくなるセルジュ。
なんだかいじらしいなあ。
ところが、浴室を出た二人は真剣な表情で立っているワッツ先生に気づきます。
ジルベールはワッツ先生は盗み聞きしていたのだと決めつけ立ち去ってしまいます。
当惑するセルジュに家から送られて来た仕送りを渡しながら「ジルベールの言う事も半分は当たってる」とワッツ先生は言うのでした。
セルジュはワッツ先生が二人の関係に疑惑を持っている事を知ります。
数日後、何事もなかったようにセルジュはワッツ先生のチェスの相手をさせられておりました。
夏休みでワッツも暇なんだね。
誰かいい人いないのかな。
用務員のおじいさんが「あの人も寂しいんですよ」なんて言ってきます。
このおじいさんは①巻冒頭で、ラコンブラード学院に転入してきたセルジュを案内してくれた人です。
温厚そうなおじいさんですが「ジルベールを温室に待たせてるのに弱ったな」というセルジュの独り言になぜか過度に反応します。
そうだ、確かにジルベールの事をあれは小悪魔だから近ずいちゃなんねえって言ってましたね。
一体このおじいさんに何があったのか。
あいつはわしの甥を狂わせたんだ!
あの悪魔が!
そう言ってセルジュにつかみかかるのをワッツ先生は慌てて止めました。
するとおじいさんはワッツ先生に、可愛い生徒ならこの子を十二分に監督しなきゃいかん・・・と言ったのです。
ワッツ先生はセルジュに乞われ訥々と話しだしました。
それは、二年前・・・
おじいさんの甥、アーネスト・ブリエが起こした心中事件。
おじいさんは、優しいアーネストが自殺など考えるはずないと思っていました。
ジルベールにたぶらかされたと思い込んでいるのです。
ワッツ先生も。
セルジュは納得しません。
が、ワッツ先生はジルベールと同室にした事を今は後悔しているとまで言い出します。
進級したら部屋替えがあるからあの部屋から出た方がいいと。
「結局は、彼を排斥するんですか!」とセルジュは反発します。
小さい頃から肌の色で差別されて来たセルジュは、人が人を排斥する現実に直面してきました。
ワッツ先生も同じなのかとセルジュは失望します。
でも、人情に訴えるワッツ・・・
親友の忘れ形見・・・
まあ元はと言えば、カールがセルジュをジルベールと同室にしようと考えたんですよね。
セルジュとならジルベールが変わるかもしれないと。
ワッツもその場にいたし、舎監なのだから責任はワッツにありますよね。
男子校の常でこういう生徒同士の特別な友情には学校側も神経質ですから、ワッツの言ってる事は当たり前ではあるんですよね。
でも期待に応えてセルジュは頑張ったと思うし、今更そういう事を言うのはセルジュに酷ですよ。
ワッツもいいヤツなんですけどねー
ちょっと浅はかなんだよね。
一方、ワッツとセルジュが深刻に話してる間ジルベールは大人しく温室で待っていました。
しかしそこへおじいさんが現れ、もう精神状態が尋常じゃないのでしょう。
ジルベールともみ合い、マジで殺そうとします。
やめろーっ!!!
ジルベールの叫び声を聞いたセルジュが間一髪助けに入ります。
やべぇ、やべぇ、
アーネストと同じようにね・・・
セルジュはジルベールを連れ外へと逃げ出しますが、あろうことかジルベールは何度も殺されかかってると言うのです。
事の異様さにセルジュは驚愕します。
その夜、セルジュはジルベールからアーネストと何があったのか聞き出そうとしました。
でもジルベールは思いだしたくないと言って激しく拒みます。
「アーネストを誘ったのはきみなのか!?」
「そうさ、誘って誘って・・・最後には裏切る。違ったのはヤツが本気になった事。とっくに狂ってたんだろ」
まあ、いつもの遊び半分でチョッカイを出したら、真面目なだけに本気になっちゃったって事でしょうか。
「アーネストはきみを殺そうとしたって?」
セルジュが気になってた事を聞いてみると、ジルベールはひどく怯えだすのでした。
ああ、こんなに怯えてる者から自分は何を聞き出そうとしてるのか?
もういいジルベール
きみを信じればすむ事だ。
そう思うけど真実を知りたい気持ちが強くセルジュはやめられませんでした。
すると震える声で、ジルベールが事の顛末を話し始めます。
────沼で月見をしようとアーネストは言ったのに、その夜は月などなかったんだ・・・
アーネストやべえ
やはりアーネストはジルベールを殺そうとしたのでした。
ジルベールは抵抗し二人はボートから沼へと投げ出されてしまいます。
夜の沼を沈みながら、何度もアーネストの指がジルベールの首へと巻き付いてきたのです。
途切れ途切れに語るうちに、ジルベールは一種のトランス状態となり意識を喪失してしまいます。
だが、潜在意識にはアーネストの声が繰り返しジルベールを苦しめていました。
───ジルベール
おまえを殺したよ
おまえは死んだんだ
沼で
沼だよ
ジルベール
熱病みたいにうなされるジルベールの様子を心配し、セルジュは揺り起こそうとしました。
けれど意識を取り戻したジルベールは突然立ち上がると「沼へ行く」と言いフラフラと部屋を出て行ってしまったのです。
セルジュが慌てて追います。
何かに憑かれたように沼へと向かうジルベール。
漆黒の闇の中を、二人は裸足のままで泥濘に足を取られながら沼までたどり着きます。
風の音と水音しかしないのに、ジルベールは「鬼火が飛んでる」とつぶやきますがセルジュには何も見えません。
沼の真ん中がぼうっと光ってる・・・
あそこには・・・アーネストの心が沈んでるんだ・・・
まるでアーネストに呼ばれているかのようなジルベールの言葉にセルジュはゾッとしてしまう。
そして、あそこには何もないといくら強く言ってもジルベールが信じないので、証明する為に沼へ飛び込むんである。
夏とは言え深夜の沼の水温は低く、真っ暗闇で何も見えないうえに足に藻が絡んでくるのでした。
勇気あるけど、一つ間違えば命にかかわる危険な行為です。
その時、ようやく正気に戻ったジルベールがセルジュの名を必死に叫んだのです。
セルジューーーー!!