この二人は一体いつ結ばれるのだろうか。
結ばれる日など永遠に来ないのではないか。
そう思ってしまうほどここまで長かったのお。
けど時間経過で言えば、セルジュがラコンブラード学院に編入して来たのは1880年の11月で現在は1881年の9月、新学期が始まるとこです。
二人は学校に帰ってきました。
明るい小雨の中をさながら妖精が舞うような足取りで駆けてくるジルベールです。
よく見れば彼はどこかの親父に追いかけられているのです。
ジルベールが向かった先には、約束に一時間も待たされた不機嫌顔のセルジュがいました。
ジルベールは謝ろうともせず、文法の先生にノートを提出しに行ったのだ、なんてすぐわかる嘘をつく。
咎めても仕方ないと諦めセルジュは「ルイ・レネ先生が聖歌隊の練習にきみを連れてこいと言ってる」と言いますが、ジルベールは馬鹿馬鹿しいと取り合いません。
そこへ追いかけて来たのが文法の先生で、セルジュはこの先生まで・・・とあきれます。
でもジルベールは「進級してからずっときみの言う通りにしてる。制服もちゃんと着るし髪もとかす。授業にだって全部出てる。先生とは何でもない」と抗弁するのです。
そっかー、あのジルベールが真面目にやってんだね。
そこへパスカルがやって来たのでジルベールは逃げてしまいます。
パスカルは、ジルベールに合唱練習なんかさせて彼を縛りつけて遊ぶ暇を与えないつもりなら逆効果だぞと言います。
それでもまあ、口数も多くなったし裸じゃないし人ザルが人になったのは進歩だと、パスカルらしい表現で認めてくれたのです。
しかし相変わらず好意的に見てくれる者など少数で、二人は二か月半もの長い夏休み中を寮に居残っていたと生徒たちの恰好の噂の的でした。
その日の合唱隊の練習は楽器庫の大掃除から始まりました。
若い頃はお堅いイメージだったルイ・レネが、今では案外お茶目で生徒たちからも慕われてて聖歌隊は和やかな雰囲気です。
でも楽器庫には鍵がかかっていたのに窓辺に誰かがいて、それはジルベールで、窓を壊して中に忍び込んだと捕まってしまいます。
セルジュがすっ飛んで来てかばう。
するとジルベールは重い口を開き、倉庫の窓は以前から壊れていて時々雨宿りに使っていただけで自分は何もしていないと言います。
ジルベールの嫌疑は晴れる。
でもなんであんなとこにいたの?
「ルイ・レネのぴいちくになんか参加する気ないよ」って馬鹿にしてたくせにジルベールったらちゃんとやって来たのです。
それに気づいたルイ・レネとセルジュは去ろうとするジルベールを喜び勇んで引き留めて聖歌隊の練習が始まります。
ルイ・レネが誘うくらいだからジルベールの歌声はなかなか美しいようです。
それに彼は他の子たちが歌うのを聞いただけでそれぞれのパートもすぐ覚えてしまいます。
でも人のソロを勝手に歌い出したので(しかも美声で)みんなあっけにとられてしまいます。
するとジルベールは「フーン、僕は歌っちゃいけないわけ?」と拗ねだし、じゃあもお歌わないよっ!!つって癇癪を起して行ってしまったのです。
一体何なんじゃあれは・・・とみんなあきれて怒り出すけど、セルジュはやるせない気持ちになってしまうんです。
ジルベールが会いに行ったのはブロウでした。
二人は夏休みになってから今まで一度も会っていません。
別に会いたいわけでもないし、それなのにわざわざ会いに行った目的は一つです。
ブロウも長い付き合いだから承知してるものの、彼は意外な物を見せます。
それはロケットで中には婚約者だという16歳の女性の写真がありました。
ブロウは放蕩息子を心配する親から婚約者を与えられていたのです。
そして暗におまえはもう性的対象じゃないと言っているのです。
これはある意味ブロウも大人になるという事で二人の関係の終焉を意味します。
ジルベールは悪態をつきます。
セルジュは毎晩のように夢にうなされるようになりました。
あの晩のオーギュストとの事が悪夢となって今でもセルジュを苛むのです。
心配したジルベールが彼に触れようとするとセルジュは体が接触する事を拒みます。
ジルベールは一人で歯を食いしばるようにして耐えるセルジュの姿を黙って見ているしかありませんでした。
学校は休暇をおえた生徒たちがぞくぞく帰校し寮の部屋替えも発表されます。
しかしセルジュとジルベールは別々となりセルジュはワッツ先生の所へ抗議に飛んでいきます。
そこには既にジルベールと同室になる生徒が抗議に来ていて、彼を汚いもののように言うのにカッとしたセルジュは相手を殴ってしまいます。
ワッツは自分から二人を同室にしておきながら今更心配になって後悔してるのです。
それは監督生のカールも同意見だと言います。
でもジルベールがさっきの生徒と同室になって上手くいくとはとても思えず、セルジュは自分があんな嫌な思いまでしたのに・・・とまたオーギュストとの一件を思い出してしまいます。
手の負えなくなったワッツは、もう保護者に任せるしかないなどと無責任な事を言い出す始末です。
しかしまあ何も知らんワッツには、オーギュストには保護者の資格なんかないと言うセルジュの言葉の意味まではわかんないわけです。
ジルベールの様子がおかしい───
体育の授業に出たくないと申します。
風邪気味だと言い訳するジルベールの額にセルジュが手をやると、ジルベールはその手を払い除けます。
でもセルジュは気づきません。
嫌がるジルベールの腕を力づくで引っ張って行こうとする。
セルジュはくやしくてイラついてました。
ジルベールとは何もないのにワッツ先生がそういう目で見ている事。
まあどう見ても何もなくはないんだけどね。
それにワッツがしようとしてるのは、この時代の男子校の先生としては至極当前の事です。
むしろこれだけ校内で噂が立ってしまっていて遅すぎるくらいだって。
何よりもオーギュストとの一件が尾を引いていて、誰にも相談出来ないセルジュは思い詰めていました。
そのためジルベールを顧みる余裕をなくしていたのです。
体育の授業の前の更衣室で、セルジュはカールにも食ってかかりました。
刺のある言い方にカールは思わず言い訳してしまい内心しまったと思います。
セルジュ、ストレート過ぎなんじゃ。
しかしジルベールはと言えばオーギュストと離れた今、性に依存しないと生きていけない彼にとってとても深刻な状況だったのです。
会いたくもないのにブロウなんかに会いに行ったりもしました。
そうやって相手に依存して気持ち良くなってる間はオーギュストと離れる不安から一時的に逃れられるからです。
今そういう相手のいないジルベールは心のコントロールを失い、他人とちょっと体が接触しただけでも性的な刺激に囚われ、なんつーか、とても悲惨な状況だったのです。
ジルベールはこれは病気だと自覚します。
セルジュがジルベールのために良かれとした事はジルベールを苦しめる皮肉な結果になっていました。
おおっ
セルジュにぶたれたジルベールの悲しげな顔よ
でもなんか相手をオレの物みたいに振る舞う男のエゴを見てるかのようなセルジュの態度に引くわ。