風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その48 第七章アニュス・デイ②

さて、カールの下宿に泊めてもらったセルジュですが、酔ってぶっ倒れたので自分が何をしゃべったのかよく覚えていない事がその後判明( ̄□ ̄;)!!
 
迷惑かけたからカールに謝らなくちゃって、あんたねえ
 
あんな大変な事を打ち明けられたカールはそうとう悩んじゃってるっつーの!
 
あれは堕落ではないとか友人を信じようとか色々と考えちゃってるんだよ。
 
そうやって今日も聖堂に残って一人祈りを捧げていたカールが、偶然耳に入ってきたヒソヒソ話でとんでもない事を聞き込んでしまうのです。
 

 
セルジュをネタにジルベールが脅迫されているとな!?
 
これは聞き捨てならぬ。
 
 
 
 
その頃、セルジュは雷雨の中を馬で遠乗りに出ていて小屋で雨宿りしようとしてました。
 
こんな日に遠乗りに出るなんてどうかしてたと後悔しながら。
 


 
 
 
そこには先客が!
 
 
ジルベールでした。
 
 
 
 
驚いて逃げようとしますが、ジルベールから「逃げないで!」と強く懇願されたセルジュはとどまります。
 
しかし気まずい二人は話す言葉もなく、雨音だけが虚しく響くのでした。
 
それにジルベールはどう見てもただならぬ情事の後という雰囲気がムンムンで、セルジュは直視する事も出来ず悲しく目をそらします。 


 
ジルベールはまたもや痛めつけられたようで動く事も出来ずホントにアダムのやろーはどんなプレイをしてるのか。
 
それでも雨に濡れてガタガタ震え出したセルジュに、上着を脱いで藁の中に入れば暖かいからと切れ切れの声で言います。
 
 

 

そっと、腕に触れてきたジルベール。
 
 

セルジュはもうたまらず泣きながらジルベールに抱きついてしまいます。
 
そして彼と口づけしながら、このまま一つに溶け合ってしまえたらどんなにいいだろうと思うのでした。
 
 
 
 
セルジュの涙がジルベールの頬に落ち、セルジュはこんな事を言います。

 
「きみはオーギュの代わりに僕を手に入れたと思ってるかもしれないけど僕はオーギュとは違う。きみが好き放題するのを平気で見てはいられないんだ」
そのくらいわかってるくせに!!って。
 
 

それを聞いたジルベールはこう思うのです。
 

 
わかってないのは・・・きみだ
セルジュ、きみは僕を信じてない
 
 
(そうだそうだ)
 
 

二人はまた諍いになってしまいます。
 
 

なぜ他の男と寝るんだ!
言えないって事はきみは僕をからかったんだ!
 
と、言うなればセルジュの方が正論ですからジルベールは窮してしまいますが、そもそも論じて言い負かしたとて何になるのかセルジュよ。
 
しかもジルベールがまたこじらせちゃう。

 

怒りで胸が破裂しそうなのに愛しているという事実は少しも変わらない!!
 
いいねぇ
最近二人のケンカが妙に愛しくていつまでも見ていたい気がします。
 
 

 
自分の本当の気持ちを言えないジルベールは、本心とは逆の行動を取ります。
 
それはセルジュのためなんですが、セルジュを好きだと素直に口に出したくないという心理も働いてるみたいです。
 
ジルベールのプライドがそうさせているのか、とにかく気持ちとは裏腹な事ばかりを言ってしまい、すぐカッとなるセルジュは真に受けて怒ってしまいます。
 
 
 
 
そして再び現れたアダムたちにジルベールが酷い目に合うのをわかっていながら、セルジュはジルベールをその場に残し一人立ち去ってしまうのでした。
 
ジルベールは心の中でセルジュ行かないでって思ってるのよ。
 
 
 
 
 
セルジュはあまりのつらさにジルベールを無視するという行動に出ます。
 
これは、ジルベールにとっては怒られてる方がまだ良かったというね。
 
存在を無視されるというのは強くこたえます。 
 
セルジュをじっと見つめるジルベールの姿にただならぬ物を感じてクルトたちはギクっとなったり、それをセルジュが無視して通り過ぎるので今度はギョっとなったり。
 
 
 
それでもアダムに呼ばれればジルベールは大人しくついて行きます。

カールは「あれがセルジュのためにやってる事だなんて」あの高慢なジルベールがと容易に信じる事が出来ないのでした。
 
 
 
 
 
そしてこうも思ってしまう。
 
自分が黙ってればセルジュはこのままジルベールと離れるのではないかと。
 
 
しかしそうはならずいつまでたってもセルジュは思いつめたままで、カールとパスカルの心配は増すばかりでした。
 
現実を見ようとしない(見たくないんだろうな)カールにパスカルの言葉が響きます。
 

そうだよ 
そもそもの発端はカールとワッツなんだから


セルジュは今でもあの時のカールとワッツの期待を裏切ってはいません。

たった一人ですべてを引き受けているのです。
 
 
 
 
 
セルジュのいない時セルジュの服を胸に抱くジルベール。



セルジュを慕う気持ちが
ジルベールを切なくさせます───
 
 
 
 
 
 
そんなある日、遠乗りに出かけたジュールは森の中の草むらにジルベールが座っているのを見つけ声をかけます。
 
 
 
 
ジルベールはこの寒いのにほとんど裸で風にさらされてる。
 
呼んでも反応もないのでジュールは行ってしまおうとするんですが、あの時見たジルベールの笑顔がまた鮮やかに蘇ってしまうのです。
 
ジュールはジルベールが見せたあの笑顔に思わず胸を衝かれるような憐憫の情を感じているのでしょう。
 
それでジルベールの元へ行ってみますがジルベールの様子は正気ではなくて、まったくアダムのやろーは
 


ズタボロになったジルベールをジュールは自分の部屋に連れ帰ります。

ところがロスマリネの残したシオン・ノーレの残り香を異常に嫌がるのです。
 
ジルベールは放心しながら口の中で何かずっと唱えていて、それがセルジュの名だとわかりジュールは愕然とします。
 
すると今度は突然正気に戻ったかと思えば、こんなになってまでもジュールに体を売ると言い出すのです。
 
その痛々しさにジュールは思わずジルベールの手を取りますが。
 
 
 

強い言葉でジュールを拒絶しているのに震えるジルベールの手。



───そんなにもセルジュが好きか?

核心を突かれてジルベールは狼狽します。
 
 


ジュールはなぜかしらとってもジルベールの事を理解しています。

そのジュールから見てセルジュはちっともジルベールの心の構造を理解してないのに、いったいセルジュのどこがいいのかとジュールは疑問に思ってしまうのです。

ジュールの見た所、誰がなんと言ったってオーギュストが一番ジルベールの理解者なのだから、オーギュストの所へ帰るのがベストな選択だろうと今までは思っていました。

ジルベールにそう忠告した事もあったのに、ジルベールったら耳を貸しませんでしたね。


 


今までジルベールの世界にはオーギュストしかいませんでした。

でも気づいたら、自分の周りは真っ暗闇のようで誰も何もいなくて、ただセルジュという名だけが口をついて出ようとするけど声にならず苦しくてたまらない。

ジルベールはそんな風に訴えてジュールに助けてほしいと頼みます。


ああそれはもう恋だね。
オーギュストの所へ帰れなんて言うのはもう遅いのだ。

ジュールはそう気づきました。


 


だからジュールはジルベールを優しく抱いてくれましたのよ。





人との親密なつきあいを避けるのに、セルジュのためなら自分の身を犠牲にするような真似に没頭してしまうジルベール。

とても極端な人間関係に陥っている姿はやはりどこかおかしい。

彼の心の中はとても葛藤していて苦しみばかりがあって、もしかしたら衝動的に自殺してしまうかもしれないからこれでよかったのです。



でもジュールは、二人の恋はまるで火と水のようで、救いようのない不幸な恋だと言い当ててしまいます。



 

一方、そんな苦しい恋がピアノに反映されいい演奏をするセルジュの成長にルイ・レネは目を細めていました。

あの小さかったセルジュがそんな年頃になったのかいとルイ・レネ遠い目・・・

恋の苦しみが芸術を育むのだと心秘かにセルジュにエールを送りながら、自分に足りなかったのはそんな経験かもしれないとふと思ってみたり。






そしてカールは、ジルベールとの関係というより自分自身の不甲斐なさに失望したセルジュから部屋替えを打ち明けられるのでした。



 

カールはついに真実を話す事ができました。



セルジュのショックは大きく、それがほんとなら僕はどれほど彼を苦しめたかと、カールの制止も聞かずジルベールに謝るのだと走り出します。




ああ!

なんというバカだ僕は

人殺しよりも悪い───



彼を信じさえすれば

信じさえすればすんだものを───