風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その7 第二章 青春④

さて、季節は冬。



ラコンブラード学院ではクリスマス休暇の前の冬期試験が始まりました。

上級生も下級生もこの時ばかりはおとなしく図書室や自習室にこもって勉強にいそしみます。


セルジュも今までは家庭教師についていたので学校の勉強とはズレがあって遅れを取り戻すためにも勉強に没頭しなければなりませんでした。


けれどジルベールはといえば、最近とみに無口になって沈んでいるようにも見えます。





遠い眼差し
なにかを待って・・・



ジルベールは気まぐれです。

もうセルジュの事など眼中にないかのように自分のカラに閉じこもっています。


セルジュもなんとはなしに声をかけるのを躊躇してしまいます。





ちょっと部屋をあけて戻るとジルベールが窓辺でうたた寝を



冬の窓辺の美しいまどろみ。



風に揺れる金色の髪。

鳴り渡る夕刻の鐘の音。
つたがからまる古びた校舎(想像)。

さすがは世紀の美少年です。



不道徳の塊のようなジルベールですが、まるで一幅の絵のようにすべてが寸分のたがいない美しさで言葉をなくし立ちつくすだけのセルジュでした。





セルジュの胸のドキドキが伝わってきそう



風でページがパラパラとめくれて淡い日差しに包まれるジルベール。


美しいものを美しいと思って何が悪いんだ、と必死に自分に言い聞かせねばならないほどセルジュの鼓動は激しく高鳴るのでした。



しかしジルベールは本当にいつも薄着ですよね。




そんな世紀の美少年が試験中にコソコソとどこかへ急ぎます。


生徒総監ロスマリネに見つかってステッキで足を打たれ転んじゃう



ジルベールが向かっていた先はメールボックスで
自分あてに手紙がきているはずだと訴えますがロスマリネは来ていないと答えます。





わたしに近寄るな!!!



ロスマリネはジルベールと違い病的な潔癖症なんですが、これはひどい。


二人は親戚関係にあるんですがジルベールに対しては激しい嫌悪感を見せるのです。


それは学院の風紀を乱す者に対して私的制裁の一切を任されている生徒総監という立場を超えた何かがあるように見えます。









そうして試験が終了すると生徒たちは今度は帰省する準備に忙しくなります。



そんな中セルジュは音楽のルイ・レネ先生に呼びだされ突然ピアノを弾いてみたまえと言われます。



ピアノが弾きたかったセルジュは嬉しそう





実はルイ・レネ先生はワッツ先生と同じくセルジュの亡くなった父アスランの親友だったのです。


アスランがピアニストとしてどんなに素晴らしい才能を持っていたかを語りアスランのかつての師であるルーシュ教授に引き合わせます。








アスランの才能を惜しんでいたルーシュ教授は、息子のセルジュがその才能を継いでいる事に気付き年明けからレッスンを見てやろうと言い出します。


それはルイ・レネ先生の策略でしたが、ルーシュ教授にとってもセルジュにとってもとても素敵なクリスマスプレゼントとなったのでした。







一方、折から降りだした雪の中ジルベールはブロウに骨が折れるまで抱けとか失神するまで抱けとか殺せとか滅茶苦茶言ってブロウをあわてさせます。




正気の沙汰ではないご様子





何か企む白い王子



ジルベールの様子がおかしいのは、叔父であるオーギュスト・ボウからの手紙を待ち焦がれているからなのです。


そしてその手紙はすでに来ていてロスマリネの手元にあるのですがクリスマス・ミサの後に渡せという差出人からの注文なので隠しているわけなんです。


ジルベールがその手紙をどんなに待っているか、そして手紙に何が書かれているのか。


ロスマリネはすべてを知っているのですがジルベールを焦らしているというね、もう白い王子というか腹黒い王子。





やがて、ミサも終わり寮の中は帰省する生徒たちでごった返します。


でもセルジュは家には帰らずに寮に残って勉強しようと思います。


本当は理由ありで家には帰りたくないのです。


寮の中はがらんとしてしまいましたが、部屋にジルベールが戻っているのかと思うとそこにはなんとロスマリネが───。


ギクッ!



 
白馬に乗ってきそうな金髪巻き毛の貴公子然としたロスマリネはまさに少女漫画の王道ですよね。



しかしこの生徒総監の権力ってすごいですよね。


先ほどのジルベールへの容赦ない鉄拳制裁とか、どんだけ偉いんじゃー!?って思いますよ。


美形の絶対的な権力者が美形をなぶるという構図がねなんかいいんですよね。





ロスマリネはジルベールが戻ったら自分の部屋へ来るようにという伝言を残して立ち去ります。


そこへジルベールが酒に酔って戻ってきます。


最近の様子がおかしいので心配するセルジュの言葉には耳も貸さずまたもや「キスして」とか言い出す始末。


けれどセルジュがロスマリネがすぐ部屋へ来るように言っていた、と言うと急に顔色を変えあわてて出ていってしまいます。





再びロスマリネ様の鉄拳制裁が


乱れた服装で部屋へ飛び込んでくるものだから規律違反だと言われ礼を持って改めて出直すか罰を受けるかと言われてしまいます。


しかしジルベールはそんな事よりも早くオーギュストからの手紙が欲しくていらいらしてますからねー、手紙くれつって出した両手をステッキでしたたかに打ちすえられてしまうのです。



それでもやっとこさ手紙をゲットして喜び勇んで握りしめ校舎を駆け抜け雪の中に飛び出すジルベール。


けれど手紙の内容は無情にも淡々とした事務的な物で



残念だが
今度のクリスマス休暇には仕事で
ローマへ旅行に出ることになった

26日早朝発つ


とありました。


26日は今日なのです。




オーギュストの意地悪




ジルベールが待ち焦がれた手紙。

クリスマス休暇にオーギュストと会えると思っていたのに会えない。


その手紙の中身もさることながら自分が旅立ってからジルベールに手紙が渡るようにタイミングを見計らっていたというね。


なんでそんな事するのよ。
可哀想じゃない。
と、言いたいよね。


それがどれだけジルベールにとって悲しく辛いことなのかってゆうと。


オーギュストからの手紙をビリビリに破り捨て
もう雪の中を裸足で泣きながらさ迷い歩いてる。








そして有名なこのセリフ。









憎しみで人が殺せたら!




元ネタはここでございますよー。


愛と憎悪に切り裂かれたジルベールの悲痛な魂の叫びと言えましょうかね。







その頃セルジュはというと、パスカルから帰らないのならウチへ来ないか?と誘われ喜んで受ける事にします。


あわただしく支度してパスカルと学院を出るセルジュは、ジルベールの寂しげな後ろ姿を見たような気がしたんですけど出発してしまいます。








失意のジルベールを一人残して───。