19世紀末のフランス。
ジプシーの血をひき褐色の肌を持つ少年セルジュは、アルル地方にある名門男子校ラコンブラード学院に編入します。
寮で同室になった少年ジルベールは、類い稀な美しさと自由過ぎる魂を持ち、まるで男娼のような暮らしを送っているのでした。
ジルベールの不道徳さに眉をひそめがらも、自分と同じ孤独と誇りを見いだしたセルジュは彼に魅かれていきます。
二人の距離は徐々に縮まっていくかのように見えましたが、ジルベールには大きな秘密があったのです─────。
金木犀の花の季節になりましたね。
どこからか漂ってくる甘い香りに思わず足を止めて、秋の訪れを感じる今日この頃です。
ジルベールがいつも愛用しているシオンノーレという香水は、この金木犀の花の香りがするそうです。
シオンノーレは作中で効果的な小道具として登場し、ジルベールだけでなくオーギュストとロスマリネもつけているのです。
うーん、意味深。
男性がつけるにはちょっと甘過ぎる気もしますが、どんな香りなのかなー。
ちなみに、シオンノーレという香水は作者の創作です。
さて本日は、学院に1年に2回しかない父兄の面会日です。
上級生の住むA棟の寮に一人でやって来たジルベールですが、運悪く出くわした数人の上級生が意地悪で、囲まれて服を脱がされそうになります。
抵抗している所へ、ジュールが現れて追っ払ってくれます。
助けてもらったのに礼も言わずこの態度
ジュールくらい余裕の大人になると、ジルベールのこんな態度もむしろ可愛いくらいなんだろね。
「今日は面会日だから寮には誰もいないよ」というジュールの言葉に耳も貸さず、どんどん中へと入って行ってしまいます。
ジュールは不審に思います。
その頃本校舎や庭では、面会に訪れた家族が歓談し、ちょっとした社交場のような喧騒でした。
その騒々しさを避けて、セルジュは一人で森の方へ行ってみます。
セルジュには面会に訪れる者などいないのです。
そしてこの二人もまた、その喧騒を見ていると息子を持つ親、特に母親という存在が奇妙に思えてくるとか言い出してね、うるさ型やねー。
あなたも母親から生まれたのでしょうね?
オーギュストとジルベールの関係も不思議ですが、このオーギュストとロスマリネも何か因縁がありそうです。
絶対的な権力で学院内に君臨するロスマリネが、オーギュストの前では抑圧され常にストレスを感じてる様に見えます。
そこへ、ジルベールの所在が連絡されてきます。
また性犯罪に巻き込まれてる
生徒総監のコネクションというか、まあジュールが言ったんでしょうね。
ジルベールはA棟の上級生の部屋を訪ね、そこで監禁されてしまっていたのです。
監禁した上級生は成績の優秀な生徒で、ジルベールは彼からいいレポートが書けるノートをもらいに行ったんだね。
もちろんタダじゃないよ。
その見返りに裸にされて、何をするかと思いきや、せっせとデッサンし始めたのねー
( ̄□||||!!
しかしもう生徒総監の知る所となりましたからね、すぐに助けられて、オーギュストが面会に来ている事を告げられます。
まあ、喜びますよ。
オーギュストと聞いた途端に、もーキラキラと表情が輝いて見えるものね。
殺したいほど憎んでたはずなのにね。
もーすっ飛んでいくわけだ。
ところがところが、ブロウが突然現れてジルベールが自分以外の人間からノートをもらったっつって、怒り心頭なのよ。
もーねー、ブロウもね、この前のSM事件ですっかり恥をかいちゃったんだから、大人しくしてればいいのにね。
ブロウのジルベールへの執着には、なんか男同士の情の怖さみたいなのを感じます。
でも、殴られても首を絞められても、どんだけ暴力振るわれたって、自分がオーギュに会うのを止める事は誰にも出来ないと、ジルベールは強く思うのです。
広間では親たちが息子をほっぽって、
有名人のオーギュストを囲んで盛り上がっています。
オーギュストはパリの社交界で人気の詩人なのだ。
ブロウにやられてぼろぼろの姿で現れるジルベール
その姿に一同がざわめく中、オーギュストは無言で部屋を出て行きます。
ジルベールも黙って後を追います。
あとに残された人たちはあっけにとられ、口々にジルベールの無作法をとがめ、ヒソヒソと悪口が始まりますが、少年の美しさも噂話の格好の的になったのでした。
さてその頃、セルジュは一人森の中で本を読んだり束の間の午睡をしたり。
そこへオーギュストとジルベールがやって来ます。
セルジュはジルベールの笑い声で目を覚ましたのです。
初めて見るジルベールの笑顔に驚くセルジュですが、もっと衝撃的な場面を見る羽目になります。
叔父と甥の、抱擁と接吻!
偶然覗き見てしまったセルジュは、逆光を受けて重なるシルエットに驚きますが、作者の描き方が、セルジュが驚きながらも見とれているようにも見えてしまいます。
けれど、次の場面ではジルベールがオーギュストに激しく詰め寄ります。
ぼくの目はなんだって見抜く
1年の辛抱だと言われこの学院へ入れられたのにあれからもう3年、いつになったら連れて帰ってくれるのか?
と聞いても、ただ待てとしか言わないオーギュストに、もうアカン我慢の限界やと爆発するジルベール。
さらに、35歳独身のオーギュストの結婚問題も持ち出し、自分が邪魔になったんだろうと悪態をつきます。
学校なんか大きらいだ!!迎えに来たのじゃないなら帰れ、と喚きたてるのをオーギュストは黙って見ていましたが・・・・。
キスして黙らす
セルジュが見ているのにー
乳首責めとかBLではよくありますけどね(笑)
70年代の少女漫画でもうすでにやってたんだね。
そして、これだけでもう感じ過ぎて腰が抜けそうなジルベールに放たれた一言が。
立ちなさい、みっともない
以前同じような事をセルジュに言ってましたっけ。どいてよ重いんだけどつって。
傷つくし、腹も立つよね。
思わずオーギュストに拳を振り上げるものの、ジルベールは涙をこらえてその場を走り去ろうとしますが、これがね。
セルジュとバッタリ
ジルベールは驚きはしたものの、セルジュの呼びかけにも応じず走り去ります。
残されたセルジュは、盗み聞きするつもりはなかったのだと弁明しようとしますが、オーギュストは意外にもセルジュに好意的で気にしなくていいと言ってくれるのです。
そのうえ、今夜ジルベールと食事する予定だから君も一緒にと、セルジュを招待しようと言い出したのです。
その晩、迎えの馬車までよこすオーギュストの周到さにあれこれ考えながらも招待に応じたセルジュ。
そこはこんな田舎町にと驚くような立派なホテルです。
セルジュはもちろんオーギュストの存在を初めて知ったのですが、オーギュストの方は何もかもわかっていて好奇心で近づいているわけです。
セルジュが来るって知らなかったのね
他方、ジルベールもオーギュストは自分に会いに来ていると思い込んでますから、彼の本心を知りません。
二人きりのはずがセルジュがやって来た為に、とんだ邪魔者が入ったとジルベールは怒りに震えてしまいます。
こわー
それでもなんとか冷静を装いながら、セルジュの気をひこうとするオーギュストの下心を見抜こうとします。
そのくせ、自分を無視してセルジュにばかり話かけるオーギュストにイラついてしまうのです。
何も知らないセルジュは、ルーシュ教授に認められたピアノの才能を持ち上げられ、パリへ来てコンセルヴァトワール(国立の音楽院ね)へ通ったらいいよ、なんて甘言を弄されるわけだ。
セルジュは本気にしてしまって、自分のような肌の色が違う者でも入れるのかと尋ねます。
芸術は限りなく自由で純粋なのだ。
そして君は十分美しい。
君はその美を誇るべきだ。
セルジュを美しいと言うオーギュストの言葉に
もうブチキレ
気分がすぐれないなら学校へ戻るがいいと冷たく突き放すオーギュストに、今夜一緒に泊まるつもりだったジルベールは愕然としてしまいます。
セルジュは二人の奇妙な様子に違和感を覚えます。
怒って出ていくジルベールを追って自分も帰ろうとしますが、有無を言わさぬ所があるオーギュストに引き留められて、かなり飲まされてしまいます。
またまたセルジュの貞操の危機
ジルベールは一人寮へ戻りますが、就寝前の点呼の時間になってもセルジュは帰ってきません。
町のホテルで一泊と学校に連絡が来ていると知り気が気ではないジルベールは、消灯後寮を抜け出そうとしますが、ロスマリネに捕まってしまいます。
また鞭打たれるというね、もうわかってたねロスマリネ。門の所で待ってたもん。
翌朝になってからホテルを訪れたジルベールですが、オーギュストはすでに発った後であり、セルジュはちょっと二日酔いです。
その明るい様子に、昨夜は何もなかったんだと安堵します。
セルジュはと言うと、昨日森の中で見た光景はすっかり忘れてしまって、君の叔父さんと知り合いになれて光栄だなどとオーギュストに心酔しているのです。
そして、オーギュストからジルベールの故郷マルセイユへ招待された事を話すと、ジルベールの忍耐も臨界に達します。
今度ばかりは許さんと怒りに燃えちゃう。悪意がなけりゃ何でもしていいと思ってんの?オーギュと二人だけでいたかったのにお邪魔虫でさ!オレが泊まるはずのオーギュの部屋に何おまえ泊まってくれちゃってんの?も許さないからー。
セルジュにはジルベールの激しい怒りのわけがわかりません。
いやもーね、オナニーもした事なさそうなセルジュにはわからないよね。
ジルベールの心象風景は、茫々たる砂漠にオーギュストがたった一人だけ佇んでいるような感じだと思うんですよね。
それはセルジュには計り知れない歪な世界だから、理屈じゃないんだよね。
おまえを憎むと言うジルベールに、憎むと言うならその理由を聞きたいと答えるのはいかにも優等生的ですよね。
しかしながら、セルジュは洗練された紳士ですからね。
まるで決闘でも申し込んでいるかのようなジルベールに対して、潔く受けるのが紳士の嗜みってもんなんですよね。
ともあれ、賽は投げられ、二人の闘いのような愛が始まろうとしていました。
第三章はこれにておしまい。
いよいよ次回から、ジルベールの過去があきらかになっちゃう。