カトリックには「告解」というシステムがあります。
自分が犯した罪を神に告白して許しを得るものです。
実際は司祭に告白するわけだけど、顔見知りだったりとかしたら、ちょっと言いづらかったりしないのだろうか。
一応顔が見えないような工夫がしてあるらしいけど、声であーあの人じゃねってわかっちゃったりしない?
すごくヘビーな懺悔しちゃって後で気まずくなっちゃったりしない?
しかし欧米人て日本人に比べると、自分が悪くてもなかなか謝らないって聞くけど、神様にはすぐ謝るのね。
さてさて、セルジュはやっぱりジルベールの事を話していました。
君はその子を見るたびに動悸が激しくなるというんだね?
その子に対して何か特別の感情を持っているのかね?
だが、わが校では「特別な友情」を禁じている。
なぜならそういった感情や衝動は、本来女性に対して持つべきものだからだ。
余談ですが、「特別な友情」と聞いて思い出すのが、1964年のフランス映画「寄宿舎 悲しみの天使」です。
原作はロジェ・ペルフィットの「特別な友情」
フランスのカトリック寄宿学校を舞台に、ジョルジュとアレクサンドルという二人の少年の、禁じられた深い友情を描いたモノクロ映画です。
貴族の子弟である15歳のジョルジュ(フランシス・ラコンブラード)は、ある日天使のように愛らしい13歳のアレクサンドル(ディディエ・オードパン)に心奪われてしまいます。
男子だけのこの学校では、生徒同士の度を越した「特別な友情」は固く禁じられていました。
キリスト教の学校の厳しいきまりと、神父たちの許容のない監視の目。
ジョルジュはアレクサンドルが落としたナフキンを拾ってやって、気づかれないようにそっと恋文を忍ばせて渡したりね。
神父の目を盗んですれ違いざまに手渡ししたりね。
その恋文にはお互いに、相手の少年を讃える美しい愛のポエムが書かれているのです。
ロマンチックなポエムをこっそりとやり取りするだけで、おおっぴらに話したりもできず、お互いの姿を探しては視線を合わせるだけ。
この学校での少年たちの置かれている環境って、現代に生きてる我々からすると、尋常じゃなく窮屈で閉ざされた狭い世界なんです。
このアレクサンドルがとても可愛らしいのです。
二人の愛が高まると、「特別な友情」の証として、お互いの腕に傷をつけて血を舐めあう「血の契り」という儀式をしたりします。
こうして二人は晴れて結ばれたという事になってるんです。
その傷跡がまだ残っているアレクサンドルに、「僕はもう大人だから治ったよ」とジョルジュが言うと
「違うよ、僕のほうが好きだからだよ」と傷が残っているのは、自分の愛の方が強いからだと言ったりします。
もう使われてない古い温室で二人は密会するのですが、ただ一緒にいられるだけで幸せ、といった風情で特に何も起こりません。
まったくのプラトニック・ラブなのです。
ジョルジュはたいへんな秀才なんですが、アレクサンドルを守る為に、二人の関係がバレないように画策したりけっこうな策士なんですね。
幾度かバレそうな危機を乗り越えますが、とうとうバレてしまい、神父は二人を無理矢理別れさせようとします。
ジョルジュに、もらった手紙は全部アレクサンドルに返すようにと迫り、二人は退学の危難に陥ってしまうのです。
ジョルジュは後でアレクサンドルに説明すればいいと考え、とりあえず手紙を神父に渡します。
神父から二人の関係は終わったのだと告げられ、手紙を見せられたアレクサンドルは、悲しさと絶望で列車から飛び降り命を絶ってしまうのです。
アレクサンドルの魂の純粋さ、激しさに胸を打たれる衝動的なラストなんですが、このラストシーンから萩尾望都が名作「トーマの心臓」を描いたのは有名な話です。
萩尾望都と竹宮恵子は一緒に暮らしていたほど親密でしたから、風と木の詩にもこの映画の影響が見られます。
たとえば、ジルベールが逢い引きする古い温室は映画そのままだし、ラコンブラード学院は主演俳優の名から取っていると思われます。
そして、アレクサンドルの姿に見る「愛とは何なのか」というテーマが、風と木の詩にもまた踏襲されているように思えるのです。
さて話を戻しましょう。
ジュールとすれ違うジルベール
セルジュはいまだ告解の真っ最中。
ジルベールは男連れ、ジュールは散歩中です。
ジルベールはジュールに興味を持ったみたいです。
こちらはセルジュ
なんか根掘り葉掘り聞かれちゃう
一度だけ誘われてキスした事を打ち明けると、それから?それから?と誘導尋問のようになってきてセルジュは戸惑ってしまいます。
そのうえ、裸で抱き合って眠るとは恥知らずだと呆然とする神父の態度に、セルジュは屈辱感を味わいます。
どうもこの神父はおかしい。
告解の最中に反論したり非難したり、挙げ句に「その相手はジルベールだね?」と刑事に尋問されてるみたいになっちゃう。
その頃ジルベールは───
さっきすれ違ったかと思えば待ち伏せ
待っていたのか?
───どういうつもり?
ジュールの問いにジルベールは無言でいます。
ジルベールは言葉など必要ないと思っているんですよね。
まだ寒い季節なのに薄着のジルベールに、ジュールは持っていた上着をかけてあげます。
そのまま自分の寮へ連れ帰るというね、急接近の二人です。
再びセルジュに戻る
セルジュは自分の行動に何ら恥じる事などないと考えていますが、神父はジルベールだけはいけないなどと言い出します。
ジルベールは成長しない、これから先も変わらない、よくならないのだからと、もう彼の事は忘れるように諭されるのです。
この神父どうも怪しいと思ったら、ロスマリネと通じていて一部始終を報告していました。
しかし今さらながら、この学院の権力構造に驚きますね。
生徒総監が一番エライの?
ところでセルジュは罪を犯したなんて思ってもいないのに、何で神父の所に行ったりなんかしたんですかね。
セルジュが悩んでたのは、自分が本来女性を愛する性であるというなら女の子に対してだけ反応すればいいのに、なんで同性のジルベールに反応してしまうのか。
体がめっちゃ勝手に反応しちゃうんだけどなんで?
と聞きたかったらしい(笑)
一方、こちらの二人はというと・・・
おっきな目で睨んでますね。
ロスマリネの名が出ると過剰反応しますね。
でもジュールは、ロスマリネとは友人じゃないと言ってたからジルベールはついてきたのに、わざと困惑させるような事を言って人が悪いですね。
ジルベールはプイッと横を向いてしまいました。
そんな仕草も気位の高さを感じさせ、彼の魅力となっています。
ジュールはそれを静かに眺めてるというね。
二人でお茶会
前に書きましたが実家が没落貴族なんですよね。
その家柄はロスマリネよりも上なんです。
しかし今は没落貴族・・・・
ジルベールがずっと黙っているから、どうして君の前だとこんなに饒舌なんだろう、なんて笑い出したりして。
なんでついてきたの?と聞かれて
誘惑しようとするジルベール
でもジュールは乗りません。
ジルベールは、陥せると踏んでたんだろうね。
ジュールはちょっと面白そうに「何をキョトンとしてるの?」と聞きます。
「どうしてなの?」と聞き返すジルベール。
ジルベールが喋ったのはこの一言だけです。
ジュールは「必要ないよ」と答えました。
さて神父の報告で明らかになった事実がこの二人に波紋を広げます。
オーギュスト・ボウに責められてるロスマリネ
オーギュストのセリフはこの時点ではまったく解せませんね。
甥であるジルベールのメンヘラ振りを他人事みたいに冷静に分析したり、会いたがっているのをわかっていて会ってやらないとかちょっと冷酷すぎます。
セルジュの一大決心で一緒に寝てあげたから(しかも裸で)ジルベールの寂しい心が元に戻れたのに、なんか愉快な事になってきたなーって。
しかもジルベールなんかを受け止めてあげる奇特な人がいたんだねー、セルジュかー、会ってみよっかなーだって。
このお方は何を考えておられるのか。