風木部

溺愛「風と木の詩」

005 風と木の詩その57第八章ラ・ヴィ・アン・ローズ④

店の同僚からのイジメにより、ずぶ濡れになって馬車を探したセルジュは雨の中で倒れてしまいます。

 

セルジュはメンタル強いし、体力だってあるのに。

よっぽど心身共に疲れ果ててしまったんだろう。

 

まあこうなりますよね。

若いし世の中を知らないし生きてく術も持たない二人が、パリで暮らしていくなんて困難なのは誰の目にも明らかです。

 

しかし子供だからこそ、世間を知らないからこそ、いかに二人の魂が激しくそして純粋なのか察するに余りあるのです。

 


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ザーザーと降り続く雨。

 

ここは二人の貧しき部屋です。

 

天窓からは雨漏りが・・・

 

 

気づくとセルジュはベッドに寝ていて、額には濡れたタオルが当てられていました。

 

 

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何気に鉄腕アトムが( ^ω^)・・・

このコップとか洗面器とかジルベールが置いたのかと思うとなんだかおかしいのお

 

 

セルジュは夢うつつに、ジルベールの声を聞きました。

 

 

ホラ弾いてよ、水の曲

 

それから風、光だよ────

 

 

 

あれはセルジュのピアノを聴いていたジルベールが、どうして人の作った曲ばかり弾くのかと言い出して、セルジュはジルベールにせがまれるまま即興で曲を作ったっけ。

 

それはセルジュの初めての作曲でした。

 

ジルベールはまるでセルジュのミューズみたいだった。

 

 

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光の中のジルベールは憂い顔です。 

 

セルジュの夢は時間を行ったり来たりしながら続きます。

 

 

親を亡くしたセルジュにとってピアノを弾く事は大きな慰めでした。

 

指先から想いが溢れ出すようで、もっともっと弾いていたかった。

 

 

それからオーギュストがセルジュの為に開いたサロンコンサートの場面に代わります。

 

「成功したらコンセルヴァトワールだよ」と言われセルジュは懸命に弾きました。

 

 

 

それで?行くの?僕を置いてパリへ・・・コンセルヴァトワールへ?

 

ジルベール、二度とは来ない機会なんだ

 

 

学院の制服姿の二人が森の中で別れ話をしているのでした。

 

 

 

ジルベールと別れてコンセルヴァトワールへ行く夢でした。

 

 

 

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やっと目が覚めた。

 

セルジュは熱を出して帰って寝込んでしまった事を何も覚えてないのでした。

 

仕事を心配するセルジュに、明日まで休んでいいと言われてるから大丈夫だとジルベールは答えます。

 

でも頑張り屋のセルジュはもう平気だから仕事に行くと起き上がります。

 

 

 

それにしても寝覚めの悪い夢でした。

 

ジルベールを裏切る夢。

 

セルジュはジルベールが一瞬見透かすような目をした気がして、何か寝言で言いやしなかったかと不安になります。

 

ふと気づくと、ジルベールは新しい絹のブラウスを着ているのでした。

 

「名物ギャルソンなんだからきれいにしろ」って支配人がくれたんだと。

 

 

 

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セルジュの言いようのない不安はますます大きくなり、ジルベールがどこかへ行ってしまうようで胸が苦しくなるのでした。

 

なんかもう目の前にいるのに生活感がなさすぎて、実態を持った人間にさえ見えないというね。

 

セルジュはジルベールを捕まえておくかのようにしっかり抱きしめるのです。

 

 

 

仕事に向かう途中、古物市を通ると古い楽譜が売られているのが目に入ります。

 

 

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あれが買えたらとただ見つめるセルジュに、ジルベールは事もなげに欲しいなら買っちゃえよと声をかけます。

 

必要なものも満足に買えない暮らしなのに馬鹿言うなよと、うだうだ言ってるセルジュのポケットに手を突っ込んで、ジルベールは楽譜を買ってしまうのでした。

 

クソだぜ

 

ジルベールらしいです。

 

 

彼が首に巻いてるマフラーは、二人が初めて結ばれた翌朝に登校する時セルジュがジルベールに巻いてくれたものです。

 

あの時ジルベールがジュールに見せた笑顔。

 

ジュールを切なくさせたこのエピソードが好きで何度も書いてますが。

 

 

 

モノに執着しないジルベールがセルジュからもらったマフラーを大事に持っているのがなんかいじらしいですな。

 

ジルベールはいたずらした子供みたいに笑いながら逃げて行きました。

 

セルジュの手には、欲しかった楽譜の束が。

 

セルジュはあっけにとられながら、ジルベールがまるで自分の心を覗き見する妖精のようだと思うのでした。

 

 

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いいですねえ、このシーン。

セルジュがうれしそうで、それをジッと見つめるジルベール。

 

 

でもうれしい事はこれだけじゃなかったんです。

 

 

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じゃーん!!

 

なんと、店の支配人がセルジュに使ってないピアノがあるから弾かないかと言ってくれたのです。

 

セルジュのテンションは一気に上がり、もお弾かせてくれるなら何でもやりますとか言っちゃって支配人を苦笑させます。

 

 

ジルベール!

ピアノが弾けるんだ!

店で日に二回も一時間ずつ

きみのおかげだ!

 

 

 

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うれしくてうれしくてただもううれしくて、涙を見せたセルジュを今度はジルベールが抱きしめてあげる。

 

最高───!と言って。

 

 

 

ともかくセルジュはピアノを弾ける事が大事なのであります。

 

お堅いクラシックを弾いたら支配人からダメだしされたので、カミイユに頼んで店の雰囲気にあう流行歌を教えてもらい弾きました。

 

そのうち、美形のギャルソンととび色のピアニストがいる素敵な店として巷で話題に。

 

 

 

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二人が近ずくと絵になるわ~

 

まあこれはウケルでしょうな。

いつの時代でも女はホモが好きだ。

 

キャッキャ言ってる女性たちの中でひときわ理知的なマレリーというピアノの先生の娘がセルジュにリクエストしたのはモーツァルトのソナタでした。

 

セルジュが弾くとその演奏の素晴らしさに、マレリーはこのピアニストの真の姿を知るのです。

セルジュは3曲リクエストを貰ったけど後の2曲は店にあわないから弾けないのだと、わざわざマレリーのテーブルまで来て謝るのでした。

その紳士然とした態度にマレリーは真っ赤になりました。

 

 

そんなやり取りを店の隅から見つめていたジルベール。

 

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突然誰かに尻を触られこの野郎と言いかけたものの、支配人の「今度問題を起こしたら辞めてもらうぞ」という言葉がチラついてしまう。

 

人目のつかない奥の席に座らされ、恐い男たちに囲まれるジルベール。

 

 

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テーブルの下で何をしてるの!おさわり禁止ですよお客さん!

 

 

この男はダルニーニというこの辺りの水商売の元締めなのです。

 

ダルニーニは自分の家の園遊会の給仕に来ないかとジルベールを誘います。

 

ジルベールが断っても「断れないさ」と言って、支配人を呼びつけて何か言いつけるのでした。

 

 

支配人は顔色を変えてダルニーニは危ない人間だとジルベールに注意します。

 

セルジュと違いおまえは我が強すぎる、とも。

 

そして「ダルニーニが渡せと言ってるから黙って受け取るんだ」と金を渡されるのでした。

 

ジルベールはその金を見ながら、どうしていつもこんな事になってしまうのかと憤ります。

 

 

 

親も知らず幼いうちからオーギュストにセックスを仕込まれ、それが愛だと思っていました。

 

その美しさで、誘えば面白いほどに誰もが靡き愛を重ねてきたジルベールは、恐らくは色気がダダ洩れなんでしょうな。

 

ジルベールの重ねて来た愛なんて、いつも暴力的でちっとも自分を幸せにしないのだけど、ジルベールにはそれしかないんです。

 

セルジュにはピアノがあるけどジルベールには何もありません。

 

セックスしかないのです。

 

そういう風に育てられたから。

 

それはたぶん見る人が見ればわかる妖しげなフェロモンがムンムンに溢れでてるんだよきっと。

 

 

 

 

ジルベールは貰った金で新しい楽譜を抱えきれないほど買ってしまいました。

 

 

 

実はその姿を見ていた者がいたのです。

 

店からずっとつけてきたのでした。

 

 

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それはパスカルの妹パトリシアでした。

 

彼女は行儀見習いでパリに来ていて、偶然耳にした美形のギャルソンととび色のピアニストの噂がもしかしたらセルジュとジルベールかもしれないと、店の前で張っていたのです。

 

この人はいつも勘が鋭いのだ。

 

パトリシアは二人を見つけた僥倖を神様に感謝します。

 

そしてセルジュをつかまえるわと誓うのでした。

 

 

 

 

そうとは知らないジルベールは、チップをよけいに貰ったからと嘘をついて新しい楽譜をセルジュにあげました。

 

 

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そしてセルジュにすがりつくのでした。

 

それはこれまでも繰り返しジルベールを襲ってきた不穏な気持ちで、それを紛らわすにはセックスするしかないのでした。

 

セルジュはまた大きな見落としをしてしまいます。

 

 

すっかりセルジュにホの字のマレリーは、彼に内緒でセルジュのピアノを父親に聞かせたんだと言います。

 

どうやら父という人は今でこそピアノ教師ですが、けっこう高名なピアニストだったらしい。

 

その先生がセルジュを見込んで教師の助手をやってほしいと言ってるというのです。

 

もちろんマレリーが頼み込んだものだろうけども、セルジュにとってはこんな暮らしから抜け出すチャンス到来でもありました。

 

セルジュは、ジルベールがあの古い楽譜を買ってから、運命が好転してるような気がしたのです。

 

だがその一方・・・

 

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ジルベールはとんでもない男に目をつけらてしまったのです。