風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その18 第四章ジルベール⑥



1877年夏。

オーギュストとジルベールはパリにやって来ました。




パリの華やかさにワクワクするジルベール



19世紀半ばまでは、パリの住民は信じられない事に汚水や生ゴミや排泄物などを道路に捨ててたそうで、パリは臭くて汚い不衛生な街でした。
コレラなんかも流行ったりして。


それが、1853年に始まったパリ大改造によって、道路を整備し上下水道の施設や公園や広場を作り、近代都市に生まれ変わったのです。


大量に設置されたガス灯は、パリの夜を明るく照らし、歩道に張り出すカフェもこの頃に出現しています。


明るくて華やかで美しくて、初めて見るパリの街にジルベールは胸を踊らせます。


考えると、生まれてからこの方マルセイユから一歩も出たことないんだよね。


早速オーギュストを見つけて声をかけてきた旧知のマダムが、噂の可愛い甥ごさんを紹介してくださいなー、なんて言うと・・・




マダム感激



一目でジルベールを気に入ってしまったマダムは、是非ともわたくしのサロンへいらしてねと言って、上機嫌で去って行きます。


サロンは上流階級の婦人が自分のお屋敷で開催する社交的集会の事。


オーギュストは心の中で、もう既にパリの空気に溶け込みつつあるジルベールを見て、社交術などいつ覚えたのだろうかと思います。


これはオーギュストを真似てるのがわからんのかな。そっくりじゃねえか。






オーギュストのパリの屋敷



レベックは執事兼オーギュストの秘書。
マルセイユの城のおじいちゃん執事と違い、年も若いし話のわかる男って感じ。


使用人たちもジルベールに好意的で、マルセイユとはまるで違います。


自由な雰囲気のパリでは、ジルベール目当てに社交界からの誘いが後を絶たず、断り切れなくなったオーギュストは招待を受ける事にします。





誰のコーディネートなのかな?





余談ですが、1996年アメリカでジョンベネ殺害事件てあったじゃないですか。
被害者のジョンベネちゃんて美少女コンテストの常連だったんですよね。
その美少女コンテストって、幼い女の子に大人と同じような化粧や髪型をさせて大人みたいな衣装を着せ、ステージの上でポージングさせるっていうね。
映像見てマジでたまげました。
可愛いのを通り越して性を連想させるんだよね。アメリカ病んでるなーと。
なんか健全じゃないよね。


まあそれは行き過ぎとしても、大人って無責任に、子供に大人みたいな格好や振る舞いをさせるのが好きだよね。


そんなわけで、へんに大人っぽい子供ジルベールは、あっという間に社交界の人気者になってしまうのです。



それゆえ、パリにいるこの男の知るところとなるのである。




ジルベールをレイプした男ボナール



ボナールはジルベールの身体を征服しながら、心までは征服できなかったと諦め切れないでいたのです。


あの時の放心したジルベールの顔を思い浮かべて、身勝手にも思いを募らせてしまいます。


同じパリの地にジルベールがいるんだと、恋する男みたいにウキウキしだすのでした。






うーん、小生意気



なんでも知ってるつってもそこはまだ子供。
気まぐれな大人たちから、チヤホヤと誉めそやされてどんどん高慢になるジルベール。



普通ならば親がたしなめる場面ですが、オーギュストはもちろん沈黙、ジルベールを観察しているのです。


さてそんなオーギュストに、近づいてきたのは。





ロスマリネ(15歳)


ロスマリネは名字ですよ。
名前はアリオーナです。


オーギュストに突然声をかけてきたロスマリネは、この時ラコンブラード学院のB級監督生。


いずれは生徒総監の座を、と虎視眈々と狙う若き野心家といった所です。
この頃まだ髪が短いですね。




その帰り道、オーギュストはついにあの男の姿を目撃してしまうのです。




動揺するオーギュスト




ボナールが社交界に顔を出すって事は、ジルベールの事を知ったに違いない。


パリへ来る事はリスクを伴う。

なのにジルベールは目立ち過ぎました。

こうなる事はオーギュストにもわかっていたのです。


動揺するオーギュスト。動揺し過ぎて、また過去のトラウマが発動してしまいます。


いつまでもいつまでも、オーギュストを苦しめるトラウマ。


そんで部屋にとじ込もってしまいます。




翌日、ジルベールがマダム・レタニエの夕食会なのにオーギュはどこ?と聞くと、レベックがだんな様に言われて出席は断りましたと答えます。



出かけるのを楽しみにしてたのに、ガッカリしたジルベールはすごい形相でこんな事を言います。




いつだってこうなんだ
オーギュは必ずぼくの楽しみをとりあげる



ジルベールも大きくなってきて、わかってきたんだね。

ジルベールが幸せそうだとオーギュは嫌な顔してるもんね。
漫画から、舌打ちが聞こえてきそうだよ。





そこへマダム・レタニエからの迎えの馬車が到着し、ジルベールだけでもお越しをと言われたので、どうしても行きたいジルベールは半ば強引に一人でも行くと押し通します。


「マダム・レタニエは僕がお気に入りだから、オーギュが欠席しても僕がそのくらいはカバーするよ」などと生意気な言いぐさで、オーギュストに挑戦的なのです。


いやいや、ボナールがいるかもしれないんだよ。行かない方がいいよ。
とはオーギュストは言わない。


あの男に会ったら、今のその反抗的な目はどう変わるか見ものだなと思ったかもしれない。


オーギュストは厳かに「行ってくるがいい」
と、ジルベールに言い渡すだけなのです。





さてさてマダム・レタニエの夕食会では、噂のジルベールが一人でお出ましとあって大盛況。


強い酒も飲めるし、葉巻も吸うし、ダンスも、会話も大人みたいにやってのける。


そんな奇妙な子供ジルベールに、女性たちは浮き立ちます。




その様子を見ていたロスマリネは、ジルベールの姿に何か胡散臭さを感じるのです。


恐らくは、オーギュストの弱味でも握ってやろうという魂胆で、嗅ぎ回っているんだけど、ジルベールに目をつけるとは大したもんですね。


さすがにこの後、ラコンブラード学院を取り仕切る生徒総監となるだけあって、鼻が利くというか勘が良いねー。




ロスマリネがあれこれ考えながら歩いていると、ボナールとぶつかりそうになってしまいます。





( *´艸)ロスマリネの耐えてる顔がw



ボナールはペドフィリアだと思ってましたが、若い青年も好きなんだ。
バリエーションが豊富だね。



そうしてついにオーギュストの思い描いた通り、ジルベールはボナールと出くわしてしまいます。




ギクッ( ̄□ ̄;)!!


ジルベールは一番会いたくない人に会ってしまって、その衝撃で満足に口もきけません。


ボナールはと言えば、ジルベールが大きくなって、ますます美しくなったと、我を忘れて見惚れてしまいます。


この温度差。






自分を引き裂いた男ボナール。


縫い合わせた傷をまた開かれたような不快な気分で、ジルベールはやっと立っていました。


そのうち、どうでも好きにしろという投げやりな気持ちになり、ジルベールは開き直ってしまいます。


ボナールは、愛していたからだと必死に説明するんでしょうね。

でもあれは愛ではなく性暴力。


自分に都合のいいように現実を捉えているボナールには、引き裂かれた子供の苦しみはわからないでしょう。


開き直ったジルベールは、ボナールを翻弄するかのような態度で霧の中に消えてしまいます。



翌朝、ジルベールの所へ青いバラが届けられる





恥知らずめと怒り出すオーギュストと、無遠慮に高笑いするジルベール。


パリへ来たばかりの頃はあんなに楽しそうだったのに、また二人の間には不穏な空気が流れ出します。


それでもジルベールは、自由なパリが好きでしたし今の生活に満足していました。



そして、ボナールが急接近してくる




拒んでも、結局は決められた運命に従うしかないのならもう拒まない。


だが、意のままに扱われるのはもうごめんだ。


ボナールの前で開き直ったジルベールの自信は、二人の立場を逆転させてしまいます。


それは、パリでならすべてが許されるという気持ちに輪を掛けていました。






そんな中で、突如ジルベールの耳に入って来たのは────