オーギュが結婚?
オーギュストが結婚する、という噂話を立ち聞きしてしまったジルベールは、とてもショックを受けます。
あくまでも噂話なんだけどね。
しかしジルベールにとっては、オーギュストが誰かに奪い取られてしまうようで、とても我慢できない事でした。
それでいてオーギュストとの関係は不穏な物となっており、曖昧な状態のまま人目を忍んでボナールと会ったりするのでした。
今のボナールはジルベールと再会できた幸運に感動しちゃって、君が身も心も委ねてくれる日まで待つよ~などと言い紳士的になっています。
ボナールとの関係は、もうすっかりジルベールが優位に立ち主導権を握っていました。
オーギュストの洗練された美しい後ろ姿。
でも、人を拒むような冷たい背中をジルベールはじっと見つめてみます。
そおっと近づきその手に口づけると、オーギュストは顔色を変えジルベールの頬を打つのでした。
ジルベール 大人っぽくなってきた
どうすればいいのかわからなくなって、執事のレベックにオーギュは結婚するの?と聞いてみます。
ジルベールの真剣な表情にレベックは笑いだしてしまい、そんなのただの噂だと答えます。
レベックは、だんな様は財産も才能もあるし独身で美形なんだから、名士の娘たちが狙いをつけるのも当然ですよハハハ、と事も無げに言うのです。
そして、ボヌファム夫人の夜会があるのだから仕度をなさいと部屋へ促すのですが、ジルベールの心は晴れません。
着飾り気取った社交界の人たちの笑いさざめく姿が、なぜだか急につまらない物のように思えたのです。
仕度もしないでぼんやり
その時へんな手のおもちゃが・・・
なんか自動で動くへんな手のおもちゃがあ
いやマジで子供の遊ぶおもちゃだよ。
コトコトコトって。動くの。それが腕に這ったりして。
思わずあぁってエロチックな気持ちになっちゃう。
欲情を催したジルベールは夜会どころじゃなくなり、行きたくないやめるとレベックに言い出します。
レベックがボヌファム夫人は気性が激しいから、今になって欠席とか失礼をしては後々まずいのではないか、と言うんですが。
オーギュストがやって来て、行きたくない者を無理に行かせる事はないと言うんです。
そしてレベックに、おまえが夫人に言い訳なんかするなよー、わがままの尻拭いなんかする必要ないぞーとか言うもんだから、ジルベールはカチンときちゃいます。
二度と社交界なぞ出てやらない!
まず二度と誘いは来ない、って社交界のおつきあい大変なんだね。
つーか、またもやジルベールから奪ってしまうオーギュスト。
「オーギュはいつもぼくから楽しみを取り上げる」という言葉を以前聞いていたレベックは、ジルベールに同情してしまいます。
でもオーギュストは、夜会に出ていても空しいばかりだからもう潮時だろうと言います。
そして「他の予定も断っておけ。ジルベールはいったん口に出したら翻さない子だ」
と退路を断っておく事も忘れないのです。
なぜにそこまで───
ジルベールが、狂おしく身悶えするほど愛しているオーギュスト。
ジルベールの神様。
これから起こる悲劇も、すべての元凶はこの人なんですが、そんなオーギュストのモデルはこの方です。
似てる?
フランツ・リスト。
天才ピアニスト。作曲家。
とにかく女性にモテモテだったらしい。
演奏会は常に多くの女性ファンが駆けつけ、各地で大成功をおさめたという。
リストの演奏を見て感激のあまり失神する女性もいたが、時にはリスト自信が失神して譜めくりの人の腕の中に倒れ大騒ぎになった。(個人的に好きなエピソードw)
オーギュストは詩人ですが、どんな詩を書いてるのか見てみたいもんです。
さて、ジルベールはと言うと、官能的な刺激を受けて身悶えてました。
パリに来て楽しかったからすっかり忘れてたけど、オーギュとどれくらいやってないっけって思い出して、アレコレ考えちゃったのね。
そして寂しくなって、オーギュストのベッドに潜り込んで大目玉を食らうんです。
雨の晩で、泥棒みたいに窓から入ってきた(部屋は鍵かけてて開けてくれないもんね)つって、怒られて外に出されちゃうんです。
そこへちょうど、ロスマリネの乗った馬車が通りかかります。
季節はもう10月も末。
冷たいどしゃ降りの雨の中に、裸同然のジルベールの姿は正気の沙汰とは思えません。
こんな雨の夜にフラフラと歩くジルベールが、いったいどこへ行くのか。
知っておけば得になりそうだと、ロスマリネは馬車で後をつける事にします。
ジルベールはある屋敷の前まで来ると、考えこんでいる様子でしたが、あまりの寒さにためらいを捨てて中に入る事にします。
そこはボナール邸。
ロスマリネは驚きますが、いや、やはりなと思い直します。
確かに、あの夜会で出会った時の二人の態度はただ事ではなかった。
オーギュスト・ボウは無類の男色家嫌いだ。
むろんソドミアンは世間には受け入れられぬ。
もし、ジルベールがソドミアンに愛されてるとしたら───
一方ボナール邸では、対応に出た弟子の少年二人が、夜中に突然主人を訪ねて来た美少年を取り次ぐかどうかで揉めてました。
雨でびしょ濡れのうえほとんど裸だからねー。
浮浪児かと思われて帰れ、と突飛ばされてしまいますが、おいおいあいつの服絹だぜーという事で、やっとボナールに取り次いでもらえます。
あわててすっ飛んで来たボナールに、雨に降られてちょっと立ち寄っただけだよ、と強がりを言うと倒れてしまうジルベール。
ボナールに抱かれて運ばれるジルベールの目には光るものが。
ボナールは凍えるジルベールをお風呂に入らせますが、どうしてこのどしゃ降りの中をほとんど裸でやって来たのか、いったい何があったのか真意を測りかねていました。
黙ってここに置いてくれれば、好きにしていい。
ボナールはその言葉にヤッホーとばかりベッドに連れ込み、あれやこれやしようとします。
ジルベールもあきらめムードで受け入れるつもりだったのですが、いざ事に及ぼうとすると枕元にあった水差しでボナールを思い切り殴ってしまうのです。
意思とは裏腹に体が勝手に拒否ったんだね。
ボナールは怒るかと思いきや、額から血を流しながらジルベールにこう言うんです。
それでこそおまえだ。
ぼくの愛する───
いいかジルベール。
誇りだ。
そのおまえの尊大な、
おまえを守る武器はそれだけだ。
震えるジルベールにボナールは誇りを忘れるなと説きます。
誘拐犯で強姦魔のくせにね。
本当の愛を知る前に自分の体がお金になる事を知ってしまうのは、とても不幸です。
体を切り売りして生きて行く事を覚えたら、やがてはすさんですり切れてしまう。
ボナールはそういう子供をたくさん見てきたのかもしれません。
この先ジルベールのような子供が生きて行く為に、誇りを武器にして自分を守れとボナールは教えたのです。
他方オーギュスト邸では、いなくなったジルベールを心配するあまり、レベックがオーギュストに詰め寄っていました。
オーギュストは今回もやっぱり、探そうともしないし、心配もしてないからです。
レベックという人はオーギュストから余程信頼されてるらしく、レベックに責められて、そんなに心配なら探してみたらいいよ自分のために、などと言います。
オーギュストは譲歩したつもりですが、その情の薄さにレベックはため息が出てしまいます。
レベックにはやせ我慢してるように見えるのか
うーん、愛情か。
オーギュストはレベックの言うような愛情を、ジルベールに示した事はないですよね。
だからと言って、愛してないのかと言えばそれはまた違うと思うんですけど。
そしてジルベールに対しては、抵抗しても必ず自分の元へ戻ってくると確信を持っています。
オーギュストはジルベールの部屋へ入ってみます。
主のいなくなった部屋は、沢山の贈り物が散乱しています。
そして水晶玉に目をとめる
ボナールからの贈り物だった
動揺するオーギュスト・・・
水晶玉を落として割っちゃいました。
オーギュストは冷酷無比でこわい人ですが、時折見せる人間的な弱さがなんか憎めません。
オーギュストの複雑な心の中では、いつも正反対の物がせめぎ合っているように見えます。
そして作中にもまた、愛と憎しみ、正と邪、道徳と背徳、といった相容れない二つの物が相克しているように思うのです。
オーギュストが水晶玉を割っちゃった所へ、ロスマリネが訪ねて来ます。
ロスマリネはジルベールの居所を知っていると持ちかけ、それがボナール邸だとご注心に及びます。
ソドミアンのボナールと関係があると、世間に知れればスキャンダルです。
ロスマリネはそれをエサにオーギュストを脅して、ラコンブラード学院での生徒総監の座を手に入れたい思惑なのです。
このルノーくんがね、突然現れて屋敷に居座っちゃったうえに、ボナール先生からもチヤホヤされるジルベールに嫉妬して一悶着起こるのだ。