これが最後の演奏になるかもしれないと、万感の思いを込めルーシュ教授の前でピアノを弾くセルジュ。
ルイ・レネとワッツも見守っています。
ルイ・レネはセルジュのピアノを聞いてるうちに、なんだかアスランの事が思いだされつい涙ぐんでしまうのでした。
かつてアスランはその才能をルーシュ教授から期待され、ルイ・レネとはライバル関係でもありましたが結核になってしまいました。
アスランが療養所から帰った時みんな本当に喜んだものですが、不治の病ですから生きて戻ってこれただけでもよかったんで、以前のように弾く事が出来なくても仕方がなかったのです。
あの時、最後の演奏をしてピアノを断念してしまったアスランの顔を、ルイ・レネはずっと忘れられなかったのかもしれません。
無念のはずなのに、ちっともそんな風に感じさせないほど明るい顔で笑って・・・
セルジュの演奏を聞いてると、ルイ・レネはあの時のアスランの姿が切なくも愛しく思い出されるのでした。
そして、セルジュもまた父の事を考えていました。
アスランは自分が失くした夢を託すように、セルジュにピアノを教えました。
幸せだったけど貧しかったから、どうしてもセルジュのためのピアノが欲しくて古いピアノを譲って欲しいと頭を下げた事もありました。
貴族に生まれ何不自由ない生活を送っていたアスランが、働いて金を得る大変さや人生の苦難と向き合い愛する者のために懸命に生きたんです。
アスランの物語は、それだけで一つの作品になりそうなほどいい話で自分は大好きなキャラです。
この人たちはセルジュが今まさに駆け落ちという暴挙に出ようとしているとは知りません。
けれどセルジュが流す涙を見て何か不穏な物を感じたようで、別れを予感するような切ない場面です。
なのに誰もセルジュの涙の意味は問いませんでした。
でももし聞かれたなら言ってしまっただろうってセルジュは思いました。
のっぴきならない状況の中、本当は誰か大人に助けてほしいという気持ちもあったのかな。
思えばアスランがパイヴァとの駆け落ちを決意して駅に下見に行った時も同じような事があったのです。
偶然出くわしたルイ・レネに「駅なんかで何をしてるんだ?」ってもし聞かれたらきっと言ってしまったのに彼は何も聞かずに去っていきました。
もし駆け落ちすると打ち明けてたら、アスランの人生は違ったものになってたのかな。
人生の重大な局面ですもん、そんな風に心が揺れるのは当たり前です。
一方、ジュールはセルジュがジルベールを連れて脱走しようとしているとオーギュストにご注進に及びます。
ジュールは以前からジルベールはオーギュストといるべきだ、セルジュとは幸せになれないと予感めいた事を言っていましたから、駆け落ちを阻止するのはジルベールのためだと思っていました。
洞察力の鋭いジュールがそう言うのだからそうかもしれん。
そうかもしれんが、そうでないかもしれんじゃろ。
さて、ジルベールはオーギュといるのが幸せなのか?セルジュといるのが幸せなのか?
これがこの後の「パリ編」のキモでございます。
いよいよ決行だ!!
パスカル製造の怪しい睡眠薬をセルジュはそっとジルベールに手渡します。
眠る前にオーギュストにこれを飲ませるんだ。
深夜三時に、なんとか見張りに理由をつけて廊下の端まで出るんだ。
ジルベールは言われた通りにやり遂げ、その見張りをぶちかまして縛り上げる担当がいて、この計画には多くの協力者がいる事がわかります。
さてセルジュですが、世話になった人への手紙を残しいざ部屋の外へ出ようとします。
ところが・・・
あろうことか、セルジュの部屋の見張りがロスマリネだったのです。
セルジュは失望しこの計画が失敗した事を悟り、せめてもう一度ジルベールと会いたいとさえ思います。
ロスマリネは外へ出ようとセルジュを誘います。
本当はジルベールと同様にセルジュの見張りを縛り上げる担当もいて外で待機していたのです。
でもセルジュと一緒にいるのがロスマリネだとわかると彼らは一目散に逃げてしまいます。
やはりロスマリネはこの計画を知っていました。
セルジュはジルベールをあんな人に任せておけないから連れ出そうと思ったのだと言います。
若さって、青臭くて何もわかってないのに、怖い物知らずでどんどん突き進む事ができちゃう。
するとロスマリネは突然札束をセルジュに手渡し「こういう時は金だけはいくらでも必要だから」と持っていけと言うのです。
(けっこうな金額だと思う。さすが金持ち)
ロスマリネが手を貸してくれる事にセルジュは驚きますが、ジルベールを連れてやって来た生徒たちもロスマリネがいるんで驚き泡を食って逃げてしまいます。
考えたら生徒総監が部屋の見張りをしてるのも妙だし、セルジュを逃がしてやるつもりで見張りを変わったのだろうか。
ジルベールはロスマリネに警戒しますが、セルジュは「彼は味方だ」と言います。
そしてみんな逃げてしまったため、ロスマリネはセルジュとジルベールを連れ門の鍵も開けて出してくれるのです。
その門は、雨の中でジルベールが追いすがるようにオーギュの名を泣きながら叫んだ門でした。
セルジュはいつかのジルベールの悲痛な姿を思い出します。
そして今、この門から自分たちは出ていくのだと思います。
ロスマリネは予定の行動はとらない方がいいと言い、二人が乗るはずで待たせてある馬車は避け自分が呼んだ馬車で行くよう勧めてくれます(馬車まで呼んであったのよ)
セルジュはロスマリネの親切の意味がわからずどうしてそこまでしてくれるのか聞きます。
ロスマリネは「きみが好きだからだろう」と言いますが、そんな事はどうでもいいのでした。
彼にとってはこの駆け落ちが成功する事こそが意味のある事だったからです。
ロスマリネは馬車に前払いして(また結構な金額)どこでも彼らの好きなところへやってくれと頼みます。
しかしなんつっても生徒総監はオーギュストの手先だもん、こんな事してこの人は平気なのかとセルジュが心配してると、ロスマリネは「オーギュストに逆らう力くらいあるさ」と言うのです。
二人の乗った馬車が慌ただしく去るのを見送り、何を思うかロスマリネ。
するとジュールが後ろの石垣に立ってすべて見ていたのでした。
二人はお互い見つめあいますが、ロスマリネは何も言わずに立ち去ろうとします。
ジュールはロスマリネに「何も言わないよ、まだ総監じゃないから」と声をかけます。
二人の仲はこじれてしまいましたが、案外ロスマリネはジュールを恨んだりはしていないようです。
以前の彼だったらそうなったかもしれませんが、ロスマリネはセルジュの姿に励まされオーギュストに抗う勇気を持ったのです。
やがて生徒総監を降ろされるロスマリネ。
伝説的な「白い王子」の二つ名は地に落ち、今後の学院での彼の立場は苦しいものとなるでしょう。
しかし眠れぬ夜も病的な潔癖症もきっと癒える日がくるのではないでしょうか。
これはロスマリネの成長物語でもあるかもしれません。
二人は馬車の中でやっと抱き合えました。
けど、二人が乗るはずで待機していた馬車に二人は現れませんでしたから、ロスマリネとジュール以外の人は二人が無事に脱出できたのを知りません。
そしてセルジュは、脱出できたもののこの先の事をまったく考えてなくて、とりあえずアルル駅へ向かいチロルへ行こうと漠然と考えていました。
するとジルベールがパリへ行きたいと言うのです。
第一部完!!!
長かった・・・
この作品は二部構成となってまして、第二部はパリ編でございます。
しかしながらすぐにパリへ飛んで行く気持ちになれないので、しばらく休ませていただきたく。
なぜなら、この後はとても悲しいお話となりますので自分には心の準備が必要なのであります。
まあ、そうエラソーに休みますと言うほどこのブログ更新してないですけど笑
とりあえず
再びパリで会いましょう