第七章 アニュス・デイ

始まり始まり~
二人だけの世界を持つようになったセルジュとジルベール。
ジルベールはとても落ち着き、二人は充実した学校生活を送るようになりました。
よかったのお
ある日、手紙を渡そうとする上級生をジルベールは突っぱねるのですが「そう言わずに受け取った方がいいぜ。いつまでもブロウの力で守られると思ったら大間違いだ」と意味深な事を言われるのでした。
セルジュは、あれは誰なんだ言えよとちょっぴり嫉妬しておかんむり。
ジルベールは相手にならずに行ってしまう。
二人はラブラブでした♡
しかしそんな幸せも束の間、ジルベールには魔の手が迫っていたんです。
セルジュがピアノのレッスンに行っている間、木に登って読書していたジルベール(相変わらず野生児)
突然、石つぶてのような物が飛んできてジルベールの顔先をかすめたのです。
あぶなっ!

コイツはアダム・ドレフィエというパチンコ?の名人?
子供騙しなと思いますが狩猟に使用するほど武器としては最強で、この技で小鳥くらいなら一発で撃ち抜けるぜつってヤバイし猟奇的なのです。
小動物を殺して快感を得てそうな陰湿な奴です。
それにしてもこの学校にはロクな奴がいねー。
なぜ突然襲って来たのかわからぬままジルベールは数人の生徒に囲まれ押さえつけられ乱暴されてしまいます。
そしてアダムは、いつだってこれでセルジュを狙えるんだぜ、目をつぶすくらいわけないぜ、と恐ろしい事を言い出すのです。
それが嫌ならオレが誘った時は断るなとジルベールは脅されてしまうのでした(そういう事か)
ジルベールにはまるで悪夢のようにしか思えませんでした。
いつも誰かがどこかからセルジュを狙っているような気がして、なぜこんな目にあわなければならないのかと思い怯えながらアダムの言いなりになるよりありませんでした。
ジルベールが夜遅くなっても戻らないからセルジュは少しイラつき、その時誰かが部屋に投げ入れた物に気づきます。
それはジルベールにあげたセルジュの十字架で、真っ二つに折れていたのです。
そこへ酔ってフラフラになったジルベールが戻ってきますが、服は乱れ、覗いた胸元のキスマークに彼が何をしてきたのかセルジュは悟ります。
「いいじゃないか。一晩くらいの遊び・・・今さらだよ」
ジルベールは心とは裏腹に開き直ってしまう。
悪い癖です。
自分の気持ちはハッキリしているのに言葉で表現する事が苦手だから。
セルジュは「心配してたけど疑わなかった。きみがぼくを裏切ったんだ」と怒ってしまいます。

ひどい目にあったのね。
かわいそうな展開になってしまいました。
セルジュはやっぱりこんな時はアスランの日記を思いだしますね。
自分は愛のために大きな犠牲を払ったとパイヴァは思っているかもしれないけど、パイヴァこそ大きな犠牲を強いられたのだ。
あのまま侯爵の愛人でいれば彼女は贅沢に暮らせその方が幸せだったかもしれないのに。
自分と一緒になったばかりにドレスの一枚も買えず、そんな生活にパイヴァは満足しなければならなかった。
人を愛するということは自分が犠牲を払うのではない。
相手に払わせるという事だ。
そしてそれが自分にとっても手痛いという事なのだ────
みたいな文章ですけど、これを読むとやはりアスランは駆け落ちした事を心の中では後悔してたのではないかと思わざるを得ません。
自分のした事が結果的に大変な迷惑をかけてしまった事に対して、口では後悔してないと言いながら両親やパイヴァに対して深い罪悪感を持っていたのではないでしょうか。
ああ、話がそれちゃいましたね。

ジルベールはなんだかもう、こじらせる一方ですが。
でも心ではセルジュの気持ちはわかっていました。
裏切り行為だと怒るセルジュを「ひよっこめ!」と苦々しく思ってたんです。
まあその道にかけては、ジルベールから見ればセルジュは未熟者には違いない。
しかし笑ってもいられない深刻な状況になって参りました。
セルジュはジルベールを許せない自分の未熟さを責める気持ちと「彼はぼくだけのものだ!」という独占欲のジレンマに、やけっぱちみたいに雨の中でボール蹴りに奮闘するというね。
まあみんなやんちゃな男の子たちだからつきあってくれる。

ボールを拾いに行ってジルベールと見つめ合うけど、二人とも言葉が出ずに黙ったまま。
ところが、馴れ馴れしくジルベールを呼ぶ声がしてセルジュはギクッとします。
誰?
あいつ誰なんだ?
ブロウじゃなかったし。
どうせ、彼は誰とでもいいんだ!
そんな風にも考えてしまう。

だけどやっぱりジルベールの事が頭を離れない。
まるで一心不乱に何かに祈ってるようにも見えるセルジュをカールが心配して声をかけますが、空元気を見せて取り繕うだけ。

みんなもセルジュの様子がおかしいと思いながらも原因もわからないしとりあえずは静観するしかないのでした。
一方、ジルベールはアダムの口からこの悪質なゲームがロスマリネに命じられていた事を知ります。
なぜ、ロスマリネが!?

そう、すべてはオーギュストが糸を引いて二人を引き離しジルベールがマルセイユに帰りたくなるように仕向けた事だったのです。
でもそれがわかってもジルベールはセルジュには何も話しませんでした。
ただアダムに痛めつけられた傷の痛みに顔をしかめ「フフン、ちょっと遊びすぎただけさ。気になる?」と青い顔で笑って見せただけ。
ジルベールらしいです。
この犠牲的とも思えるジルベールの行動には少なからず驚かされます。
ジルベールにとってはアダムから受ける性暴力などある意味慣れっこだから、傷つくのは体だけで心までは傷つきません。
でもジルベールの中に芽生えたセルジュへの愛がそうさせている以上、セルジュが悩みに悩んでジルベールと肉体関係を持った事はやはり間違いではなかった、と思います。
ジルベールはしみじみとセルジュへの愛を噛みしめているんだろうな。

その証拠に、セルジュがジルベールを避けててジルベールがセルジュを見つめている、というかつてないレアな光景も見られます。
こいつらまだツルんでる。美少年愛好倶楽部。
でも二人の微妙な変化に気づく所はさすが。
そこへなんとセバスチャンが割り込んでくるというね。
少し大人っぽくなったセバスチャンはセルジュのピアノが聞きたいとせがみます。
(ちらっとジルベールを見たりして)

息がつまるようなこの状況から抜け出したいセルジュは、ジルベールを残しセバスチャンと出ていってしまいます。
この展開にパスカルが、あのジルベールのライバルにセバスチャンが名乗り出たと言ってかなり面白がっちゃう。

そしてこっちの感想も聞きたいと、部屋を出て行こうとするジルベールをわざわざ追いかけて声をかけてます。

だけどジルベールの方が上手でした笑
その頃、ジュールはロスマリネがアダムと密談している姿を見かけます。
ロスマリネは「マルセイユからの依頼で秘密取引だ」と説明します。
そして、ジルベールなどをそうまでして呼び返したいとはとても理解できないとあきれ顔で言います。
ジュールはヤツに何をさせたんだと聞きますが、ロスマリネはそこまでは知りませんでしたが(無責任)

ジュールはあの寒い朝、ジルベールが見せた笑顔を思い出していました。
あんな顔を見せたジルベールを今さらセルジュが放り出すと言うのか。
引き離されそうになる二人にジュールの憐れみは募り、ジルベールさえいなくなればセルジュは将来有望な生徒だ、と単純に考えてるロスマリネにこう言います。
「なにゆえにセルジュが豊かになったか考えもせずに?」
ロスマリネはキョトン顔・・・
もうセルジュの様子は限界でろくに寝てないみたいだから、パスカルが一計を案じ週末カールの下宿に泊める事になります。
ジルベールと何かあったのか?
とカールが尋ねると、セルジュは彼と寝た事を打ち明けるのでした。
カールはあまりの衝撃で言葉もなく、しかしセルジュは、罪だという事は十分知ってるから懺悔はしないと言うのです。

しかし聖堂で一心に祈りを捧げるセルジュの姿を見て、カールは考えを変えます。
──背信ではない
彼の行為は背信ではなかったのだ