風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その16 第四章ジルベール④



まだ子供だっていうのに、恐ろしい事にボナールにレイプされショックで放心状態のジルベール。


憐れな姿で戻って来たジルベールにオーギュストの態度は冷たい。




あんまりだ



この最悪の事態は予定調和でしょう。


ボナールは危険だと執事も危ぶんでいたのに、警戒も忠告もせず成り行きに任せていたオーギュスト。


まるでジルベールの不幸を望んでいるかのように見える、オーギュストの不可解さ。


失敗するのがわかっていて手も貸さず知らん顔していて、失敗したら批判を浴びせるっていうね、底意地の悪さったら。
心がねじ曲がっているよ。


それを見てたタズトだって黙ってられない。
オレが助けなかったらこの子は死んじゃったかもしれないのに、このうえ責めたてて!と抗議します。


でもオーギュストは顔色も変えず、死ねばよかったんだなどと言うのです。


ジルベールは悲鳴をあげて失神してしまいます。





二人の冷たい視線w



タズトと執事がまともな人に見えるな。




ただ、オーギュストはジルベールの姿に昔の自分を重ねていました。


あまりの打撃で口も聞けないジルベールを見て、かつて自分が味わった苦痛が蘇ってきたのです。





よみがえるトラウマ




オーギュストの心に深く刻まれた傷。


考えたくない、思い出したくないと思っていても、フラッシュバックのように記憶に蘇りオーギュストを苦しめるのです。




オーギュストは義兄の相手をさせられていただけで、自身は男色家ではありません。


そして男同士に限らず性行為というものに異常な嫌悪感を持つようになり、性行為で人は汚れると考えるようになったのです。




それほど、オーギュストが義兄から受けた仕打ちは目も当てられない酷いものでした。


お金持ちのコクトー家に騙され、変態息子に強制的に性的暴行を受け続け、時にはその取り巻きの相手を強要されたりもしました。


オーギュストは恐怖と混乱から、泣き叫び哀願しこびへつらい許しを請いました。


いかんともしがたい現実に絶望しながら、オーギュストは自分を助けてくれる強い力を持つ存在を待つようになったのです。


こういう状況って想像するに、もう自分で考える事をやめてしまうんじゃないでしょうか。


そして、ただもう強い力が自分を救ってくれたらいいな、支配してくれたらいいなって放心したように思っていたんじゃないかな。



オーギュストは気づく





このままではジルベールは壊れてしまう。


だから自分が強い力でジルベールを支配するのだと。


それはジルベールを救う為なのか、支配して操ろうとする為なのか。






ひどい傷。義兄に焼かれた火傷の跡でしょう。




こういう方法しかないのか自分にはよくわかりませんが、オーギュストは経験上、今のジルベールに必要な事はこれだと判断しました。


オーギュストはジルベールとセックスする事に、背徳も罪悪もありません。







二人を暗示するかのように嵐が吹き荒れる



オーギュストは自分の人生に対して、やり場のない怒りを抱えています。


そうしてジルベールにはあくまでも無垢を求めようとします。
汚されるな。無垢でいろ。
その為におまえを支配する。


愛なのか、狂気なのか。
矛盾に満ちたオーギュスト。


その愛撫を受け正気に戻ったジルベールは、ボナールとの出来事に上書きするように、オーギュストから暴力的なセックスをされてしまうのです。



ずっと待っていた






人間が初めて知る愛は親の愛でしょう。


子供は親から愛されて、満たされ安心感を持ち幸福の意味を知りそうやって人は大きくなっていくものです。


けれどジルベールはそういう愛を知らないで、セックスし抱かれる愛を知ってしまったのです。







力強く花開いたジルベール


ジルベールはもう人形でも忠実な猟犬でもありません。


オーギュストと対等に愛し合う恋の相手となったのです。






さて、悪夢のような出来事から立ち直ったジルベールですが、オーギュストには誤算がありました。




外出先から戻る馬車の中


いきなり胸元に手を入れてくるジルベール



オーギュストは自分がそうだからジルベールも同様に、性行為には抵抗感を持つだろうと考えていました。



降りてこないから覗き込む御者


慌てて取り繕う執事



さにあらず、人前でも平気で求めるようになってしまったのです。はしたない。


すっかり抱かれる事に慣れてしまい、よからぬ行為だとも思わずにそれが愛だと思っているようでした。



オーギュストの迷いなどおかまいなしに


溢れ出す思いが止められない




自分に絶対服従を誓うだろうと踏んでいたのに、意外にもジルベールは強くしたたかで、あの事件など嘘のように忘れてしまったかに見えました。


だからオーギュストはちょっと引いてしまう。


また以前のようにジルベールをスルーして書斎にこもったりしてしまいます。


ジルベールは面白くないから邪魔をしようとします。


腕に葉巻をつけたらどうなるかやってみたなどと言って、火傷した腕を見せたりします。


このかまって欲しい迷惑行為にオーギュストはやっぱイラついてしまう。




まったくもー、セックスと暴力ばかりです


でも暴力にさらされても負けていないのがいいね。
ちっとも卑屈になっていない。
オーギュストに愛される事で美しさによりいっそうの磨きがかかったんだ。




出ていけとオーギュストに言われたジルベールは、「僕を愛してくれないなら死んでやる」と言い出します。



好きにしろ


この表情



じゃさよならお別れだね、と言ってジルベールは部屋を出て行きました。


それはジルベールの脅しだとわかっていても、結局気になってオーギュストは後を追う羽目になります。





探し回るオーギュ


こんなゲームを繰り返しながら、いつしかオーギュストはジルベールを愛している自分をはっきりとさとります。


求められるままにジルベールを愛し、ジルベールはオーギュストとのセックスに溺れました。


この二人だけの日々はジルベールにとっては本当に幸福な日々でした。




にもかかわらず長くは続かなかったのです。


ジルベールのいつも何かに飢えていた孤独な影。



それが消え、オーギュストに愛され満ち溢れて幸せに輝くようになったジルベールを、オーギュストは快く思わなかったのです。








何でやねん!