さて、深夜にボロボロになってご帰還したお騒がせなジルベールの容態が気になるセルジュなのですが。
セルジュを見つめる熱い視線
この下級生はセバスチャン・マイセ。
実はカールの弟です。
でも品行方正な兄とは違ってこの子は何やら積極的でハキハキしています。
転校早々、ラテン語の試験で並み居る上級生を押しのけて2位になったセルジュに憧れちゃったようです。
(ちなみに1位はロスマリネ先輩です)
セルジュはお勉強も運動も出来るんだねー。
C級生(8歳から11歳)のジャケットの丈は短めですね。
セバスチャンは成績優秀者に贈られる朱色のサッシュベルトを腰に巻いています。
B級生の制服がギムナジウムものの定番だよね。
大きなヨークでギャザーをたっぷり取ったブラウスとハイウエストのズボンとかクラシックだよねー。
チョッキとジャケットの襟は水色サテンなんだ。
セルジュが部屋へ戻るとジルベールはベッドで咳き込んでいて具合が悪そうです。
セルジュが親切にアレコレ世話を焼いてあげると
命令口調が気に入らないと言って、突然爪をたてて引っ掻くという野生動物のような不埒な所行に及びます。
命令なんてしてないのに・・
口で言えばわかるのにどうしてこんな乱暴な事を・・
ほっぺから血が出てるのに怒るよりも「どうしてジルベールはこんな事するのだろう?」
などと考えているうちにセルジュは眠りに落ちてしまいます。
すると━━━。
戸棚の中に隠れていたジャック・ドレンが現れる!
いったい彼は何をしようというのか、と言いますと・・・
ジルベールから「セルジュを部屋から追い出して~」と頼まれたわけですよ。
「やってくれれば僕は君の言いなりになるから~」と甘い言葉で。
そこでセルジュにエーテルを嗅がせて(ドラマとかで拉致られる時ハンカチにつけて口押さえられるヤツね)意識不明にして、ついでにちょっと首しめたら森へ捨ててこようというね、なんかお粗末な作戦を考えたんだね。
見た目の割に頭悪そうだよね。
何時間戸棚に隠れていたんだろうか(笑)
ところが仕事の前にジルベールに、おまえは信用できないから先にやっとくつって無理矢理おっぱじめたわけですよ。
セルジュ意識を取り戻して現状を理解ヤバそうな不良上級生に挑む!
転校してきたばかりだし下級生だからとドレンは馬鹿にしてたんだけどセルジュは勇敢な態度で「この部屋から出ていけ」と叫びます。
ドレンがジルベールがここでこういう事をする事は誰もが認めてるんだ、邪魔者はおまえなんだと言ったって「僕は認めない!!」と頑張っちゃう。
殴られたって「僕は暴力には屈従しない!!」と一歩も引かず頑張っちゃう。
その奮闘ぶりを隣室の生徒たちが聞き耳をたてていて「頑張るなあ、あのジプシー」とか噂してるのがおかしい。
セルジュが負けてないので騒ぎが大きくなってドレンは逃げだします。
にらみあう二人
セルジュはこの後自分のベッドに戻って泣いちゃう。
ジルベールと同室になるという事はホントに大変なんだと痛感する事件ですよね。
それにジルベールが自分を部屋から追い出そうとした事がセルジュにはショッキングだったろうけど、よく頑張ったねー。
そして翌朝は毎日曜日ごとに行われる全学ミサの日。
全校生徒が一同に会する場なので昨夜の一件の話題で持ちっきりです。
ドレンを相手に一歩も引かなかったセルジュは生徒たちから英雄視されたり友達になろうよと握手を求められたりもします。
でもセルジュが気にかかるのはジルベールの事ばかり
昨夜あんな事があったのに今朝起きたらもうジルベールは部屋にいませんでした。
彼が何をしようと放っておこうと思っては見たものの、ジルベールが全学ミサに寝過ごしてしまわないよう目覚まし時計をセットしてくれた事に気付いてセルジュの機嫌はすぐに直ってしまいました。
ジルベールまわりをごらん
みなが見とれてる
君の輝く金髪に───
きみがそうして微笑んで陽光の中にいると
なんてきれいだろう
全校生徒は即聖堂前の中庭に集合!
ロスマリネによる厳重処分が下される
ドレンは放校処分、ジルベールはお構い無し
セルジュはこの片手落ちの裁定に抗議しようとします。
あの事件はドレンの口からジルベールの計画だったとはっきり聞いたんだと。
でも事の真相はセルジュが暴くまでもなく皆知っているのでした。
知っていて誰もが口を閉ざしている事にセルジュは違和感を覚えます。
そしてジルベールにも変化が───
左手の握手は別れの握手・・・
まあ色々な事がありましたがここまでがセルジュの転入一週間目です。
色々ありすぎだっつーの。
ジルベールはと言うと、すっかり真面目になってしまって授業にはちゃんと出てくるし別人みたい。
そうなるとセルジュという子はジルベールをきちんと友人として扱い少しでも皆に溶け込ませようと努力します。
でもカールはセルジュがジルベールの術中にはまっているようなイヤな予感がして、パスカルにセルジュに注意してくれないかと頼みます。
パスカルは他人に干渉するのはイヤな人だから断るけど、内心セルジュをジルベールにぶつけてみたいなとか思ってるんです。
あまたの真面目人間がジルベールにはねじ伏せられてきたけどセルジュはちょっと違うんじゃないかって。
セルジュの素直な明るさはいい育ちのせいじゃない。
むしろその逆、だからもしかしたらセルジュがジルベールを変える最初の人間になるかもしれないと。
しかし学院内はジルベールとセルジュの噂で持ちっきりです。
生徒たちが自由時間をつぶす談話室
談話室では生徒だけで通じる隠語で好き勝手な事をしゃべったり、お茶したり、ゲームに興じたり
思い思い楽しみます。
暖炉ではマフィンやクリを焼いたりしている生徒もいます。
ただここに出入りしているのはおもにB級生のようです。
C級生は先輩たちが怖くて入りづらいし、A級生は大人だから自然に寄り付かなくなるんではないでしょうか。
セルジュもすっかり皆と打ち解けて談話室の仲間入りしていると、表で覗いていたジルベールに気づきすぐに中へ招き入れます。
招かれざる客にざわめく談話室
セルジュはこういうとこホントにKYなんですよね。
カールと一緒にいるのは巻毛でソバカスがクルト・スタックラーで、ひょろいのがエブラハム・ネカーというクラスメート。
二人はセルジュが大好きなんだけどジルベールは大嫌いだから、セルジュがジルベールをかまうのが気に入らないわけ。
二人だけじゃないよ。
カールとパスカルだっていざ自分たちのグループにジルベールを連れて来られたら嫌なんだから。
もう不快感をグイグイだしてるんだけど、セルジュはジルベールの事で頭が一杯で気付かないのか、もともと鈍感なので気付かないのか、自分は正しい事をしてるという信念があって気付かない振りをしてるのか━━━
うーん、全部当てはまりそうな気がする。
ジルベールは自分が嫌われている事なんて百も承知だしセルジュをからかう為に来てるんだから全然気にしてません。
そしてまたとんでもない事を言い出します。
もうね、こんなのはジルベールだから許される事ですよ。
皆の目は二人に釘付けです。
セルジュはと言うと、ジルベールのふざけた態度にちょっとムッとしちゃう。
そう言われてジルベールはちょっと不思議そうな表情をしてセルジュを見ます。
そして、嫌ならセルジュが自分で振り切ればいいじゃないかと言うのですがセルジュは断固として「君が自分から離すんだ」とキッパリと言い切ります。
これはねー、ジルベールは誇りを傷つけられてるんですよー。
ジルベールという少年はとても気位が高いんです。
高貴な人っていうのは、してもらうのが当たり前で自分からは何もしないようにジルベールにとっては自分の方から手を離すなんてあり得ないんですよ。
さて震える手で自分からセルジュの手を離したジルベールは逃げるように部屋の隅に。
その様子に談話室の生徒たちはセルジュの勝ち〰️
みたいに単純に盛り上がってしまいます。
しかも日頃ジルベールをよく思っていない連中が調子に乗ってジルベールに意地悪しようとします。
燃えている暖炉の中で焼いているクリを素手で拾えとか言い出しちゃう。
ジルベールは抵抗もせずに言いなりになっていて
暖炉の中に手を入れようとします。
しかし燃えてますからね、炎の中に手を入れるなんて普通できませんよ。
もう見てられんわ!つって結局セルジュが手を突っ込むというね。
まさに火中の栗を拾う
ちなみに火中の栗を拾うとは、自分の利益にならないのに他人の為に危険を冒す事です。
心配性なカール
カールの言う通り、ジルベールはセルジュが助けてくれるのをわかっていて言いなりになっていたんでしょうね。
カールはセルジュが自分のようになってしまうと思って心配でたまりません。
でもセルジュはもうジルベールを好きになっちゃってますよね。
ただセルジュは父親譲りの生まれながらの紳士だし潔癖だからジルベールを性的な目で見る事には抵抗を持っています。
そういう目でジルベールを見る事は彼を侮蔑し見下してしまう事だと考えていると思うんです。
これはもうね、著しく対照的な二人なんですよね。
以上、第一章薔薇でした。