風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その5 第二章 青春②


学院の外出日にジルベールが原因でクルトと取っ組み合いのけんかになってしまったセルジュ。


クルトは絶交を宣言し怒って帰ってしまうし月に一度の外出日は台無しになっちゃいました。


カールはとりあえず自分の下宿にセルジュを連れて行き傷の手当てをしてやりますが、セルジュがずっと深刻な表情でいるので意外な気がします。


そしてセルジュが自分の事のようにジルベールを弁護した事に驚きを隠せません。




正直すぎるのはセルジュも同じである



セルジュの怒りはジルベールに恋してると言われたからじゃなくクルトが彼を汚いと言ったからです。


自分もまた「ジプシーの娼婦の子だから汚い!」と言われた経験があるのです。


カールは「人間は誰でも最初は行為で判断されるものだからジルベールの行いが悪いんだから仕方ない」と言います。


しかしセルジュはジルベールがあんな事をする裏側でどんな思いをしてるか知ろうともしないで彼を批判しないでという気持ちになってるのです。


そこでカールはたぶん知られたくなかったろうけど、あの傷だらけのジルベールにそそられて思わず襲いかかろうとした事を話します。





カールはもうずっと自分を責めてるんだろうね。
ジルベールの魅力に負けちゃって。
性欲ってこんなに自分で制御できない物なのか~
つって。




カールを見てるとサマセット・モームの有名な小説「雨」を思い出します。


南海の孤島で自堕落な娼婦を悔い改めさせようとする牧師が娼婦への肉欲に負けてしまい悔恨のあまり自殺してしまうという短編小説です。



結局神に仕える牧師でさえ理性なんてものは本能にあっさりと負けてしまうというね、人間の本質をついたお話なわけなんです。 


人は罪深いものだとジルベールはわかっているのでしょう。


それでこそ人間なのだとも言えるのだけど。



この牧師を思わせるような役割を与えられたカールは後に神学校へ進む道を選ぶんです。




ジルベールは人を信用してません。
彼が信じるのは肌と肌が触れ合う事でしか得られないぬくもりだけなのです。
彼に近づこうとする人間はしょせんは彼の性的魅力に捕らわれたか上っ面だけの言葉で彼の素行を直そうとしたりする人だからね。
彼はそのどちらにも心を開く事はないんです。



カールみたいにちょっとからかってやればすぐに逃げ出して行く。


そうやってジルベールは人を選んでるんだからうろたえずに受け止めたると言うセルジュ。



「ええっ!そ、それって・・・君はまさかジルベールの誘いに乗ろうと言うのか・・・」


カールはそれにしてもいちいち過剰反応が過ぎると思うんだけど。



僕が知りたいのはジルベールのからだじゃなくて心だ

きみは恐れないというの!?
罪をおかすことを!




ヨーロッパでは同性愛者を処罰する法律は次々廃止されフランスでもこの時代には犯罪ではなくなりました。

しかし罪には問われなくなっても根強い差別意識は残り西欧キリスト教圏では生殖目的以外のセックスは罪悪視され同性愛者は厳しく弾圧されたのです。






だいじなのは罪をおかさないことではない

罪をおかすまいとして
真実を見誤ることだ



カールの過剰反応もキリスト教の禁欲的な道徳観念によるホモセクシャルへの非寛容が原因のこの時代の人たちが普通に持ってるホモ嫌いの感情なんでしょう。


むしろセルジュの発言が変態扱いされてもおかしくないかもしれません。





もうぼくの出る幕じゃないね・・・



自分の無力さを恥じるかのようなカール。

彼にとってはセルジュの存在は自分とはまったく異質でまばゆいものなんじゃないでしょうか。





外出日の夕食



ジルベールを探すセルジュ。


部屋にも帰った様子はなく門限時間を過ぎても姿を見せません。



消灯を過ぎてからようやくブロウと現れたジルベール
別れ際にキスする二人を窓から見ていたセルジュ




やめさせなきゃ

それから
・・・・
それから



セルジュはほんとにいつも一生懸命だ。


でも部屋に戻ってきたジルベールはセルジュの言葉には耳を貸しませんし、今朝の一件(ジルベールを連れて行けなかった)で二人は口論になります。




パリーン!!
なんか割れる音



好きか嫌いかと問われれば嫌いだろ。





そしてジルベールが誘惑してくるのだ



私はこの漫画を初めて読んだのは小学生の時だったんですが早熟な自分でもさすがにジルベールの性的な魅力まではわかりませんでした。


美少年だからみんなが夢中になるんだと思ってました。


でも再読してみますとジルベールはなんかこうスゴくエロイ雰囲気を醸し出してくるわけなんですよね。


もう、すぐ脱ぐよね。これみよがしに脱ぐよね。華奢なんだよ。華奢なんだけどすごくエロいオーラを出してくるわけ。劣情をそそられちゃう。
最強の誘い受けなのだ。




ジルベールにリードされはからずもその気になってしまう


だがしかし

いいかげんにもうどいてよって・・・


ブロウとの事をお説教するつもりだったのにジルベールの誘いにまんまと乗ってしまったセルジュ。

我に帰って後悔しても後の祭りでジルベールにしてやられてしまったのです。


これは、セルジュに同情します。



そして翌朝、もちろんセルジュは睡眠不足



出た!シオンノーレ!


風と木の詩と言えばシオンノーレです。

シオンノーレはキンモクセイの香り。





何があったってセルジュは正々堂々と胸をはるのだ


その姿はジルベールには自分に挑んできているかのように感じます。


二人の恋はまるで戦いのような、狂おしくもつれ合う、怖い、悲しい恋なのですがこれはその始まりと言えましょう。



そして覚悟はしたはずだったのにおそろしい疲労感に包まれてしまうセルジュを狙うリリアス。



リリアス・フローリアン
まあジルベールと比べれば小物だけど可愛いか


ジルベールとの事で学院内で目立つ存在のセルジュにちょっかいを出そうというね。
別にセルジュが好きなわけじゃないけどからかってやろうというケチな小悪党です。


呼び出された温室で言い寄られる


悪ガキどもがはやしたてる


これは集団リンチですよね。
みんなで押さえつけてリリアスに無理矢理キスさせたりして大騒ぎしてるうちにセルジュが割れたガラスで傷をおって失神してしまったのです。





さあ、どうするジルベール?



つづく