風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その32 第六章陽炎④

 

 
 
 
さて美少年愛好クラブの会合にのこのこ顔を出してしまったセルジュですが、もちろんこれは誰かの罠です。
 
「珍しい黒い果実」だなどとセルジュの肌の色を揶揄して貶めようとする悪意を持った第三者。
 
こういう卑怯者はどうせ面と向かって言えないんだから無視するに限りますが、小さい時からこんな事ばかりでセルジュには同情しますね。
 
ほんとイヤだなぁ。
 
 
 
 
でもセルジュが来たってんで盛り上がっちゃう上級生たち。
 
 
B級生とA級生は現代風に言えば中一と高三くらいの体格差がありますからセルジュを悪戯にからかってめっちゃ嬉しそうです。
 
 
でもこんな場面でもセルジュの事だから負けやしません。
 
 
いつでも顔をあげて堂々としているのがセルジュの矜持です。
 
 
 
膝蹴りが見事に決まっちゃう
 
 
 
これはレオ効いたでしょう・・・
 
セルジュはケンカなんてどこで覚えたんですかね。
 
格闘術なんて貴族のたしなみであるのでしょうか。
 
しかしそれがかえって逆効果になってしまったみたいで、レオは抵抗されるのが新鮮味があっていいなとかちょっと燃えてきます。
 
 
もう、セルジュを捕まえろーつって大騒ぎ。
 
 
 
ジルベールは静観・・・
 
 
 
面白半分でやってるんでしょうけど悪ふざけが過ぎます。
 
こういう盛り上がった雰囲気だと悪ノリして度が過ぎちゃう事が往々にしてありまさーね。
 
セルジュはかわいそうにこの時左の肩を痛めてしまいます。
 
 
 
セルジュが転んだ所をここぞとばかりに殴りかかる下級生たち
 
 
 
 
でもよく見ると積極的にボカボカ殴ってるのはリリアスだけ。
 
かまわないから裸にしちまえ!とかヤバイ事を言い出すので、レオたち上級生はちょっとまごつきます。
 
この美少年愛好クラブの面々はどちらかと言えば小物臭いノリでそんなに悪い奴らじゃないような気がします。
 
その証拠にレオは大人ぶって下級生を止めようとします。
 
特にリリアスが興奮してるので力ずくでやめさせます。
 
 
 
 
 
 
リリアスはとうていジルベールの足元にも及ばないんだが、本人は勝手にライバル視してるんですよ。
 
ジルベールは真に孤高の人だけどリリアスは周囲からチヤホヤされてお姫様扱いされたいっていうね、どこにでもいそうなあざとい女子みたいなヤツなんですよね。
 
だからジルベールが目の上のたんこぶなんで、セルジュにちょっかい出そうとして拒否られた事が悔しくてたまらないのね。
 
 
「ジルベールとじゃなきゃ嫌だとさ」
 
 
ジルベールはそれを聞いて少し反応を見せはしますが、黙って成り行きを見守ってるだけですね。
 
この人数に勝てるわけないしちょっと一緒にふざけてくれりゃいいんだからもう観念しろ、とレオに言われてもセルジュは逆に何を観念しろって言うのかと言い返します。
 
 
なかなかここまで言えない
 
あんなに悪乗りしてた場の空気がセルジュの言葉でしらけてしまいます。
 
でも、みんな頭を冷やすにはいいでしょう。
 
セルジュが部屋を出て行こうとし、この馬鹿げた騒動も終わりかと思いきや今まで黙って見ているだけだったジルベールがゆらりと立ち上がります。
 
 
「待てよ!」
 
「帰しゃしない。おぼっちゃん気どりの正義感ぶった欺瞞ヤロー」
 
 
こわ
 
 
 
なんとまあ、意地の悪い嫌な奴でしょうか。
 
ジルベールが出てきたら、なんかガラッと狂気的で凄惨な雰囲気に変わった気がする。
 
ジルベールは一匹狼のイメージでしたがこれじゃまるで影の裏番長、若き日のオーギュみたいです。
 
セルジュを正義感ぶった欺瞞ヤローだと罵るジルベール。
 
今ジルベールが見ている世界の中ではセルジュはまるで敵のように見えてるんですよね。
 
そしてその敵の正体を暴いて証拠を突きつけてやろうと、何が何でもセルジュを悪人にしたいんだね。
 
 
 
ともかく、セルジュは大変な危機に陥ってしまいます。
 
 
 
 
 
一方、こちらは土砂降りの雨の夜を過ごす二人。
 
ジュールの部屋です
 
 
ロスマリネ様は今日はジュールの部屋に入り浸り。
 
オーギュストが怖かったから一人でいたくないのでしょう。
 
窓の外を見つめていると何か物音がしたような気がしますが、誰かが騒いでるんだろうと心に止めませんでした。
 
(セルジュがピンチだから早く気付いたげてー)
 
 
 
 
そして、ジュールと言ったら印象的なのが「お茶」でございます。
 
茶の歴史は世界史と密接に繋がっていますが紅茶と言えばイギリスで、フランスの茶文化はやっぱコーヒーじゃないですか。
 
しかしながら耽美な美少年はたいてい紅茶派って事になってるんで、この作品もまた然りです。
 
以前ジルベールを部屋に招いてお茶を入れてくれた事もありましたっけ。
 
寄宿舎でさえ高級感溢れるティーセットで優雅な茶を愉しむジュールってなんか特別感がありますよね。
 
そんなジュールがロスマリネとティータイムです。
 
けれど、こちらはこちらで何やら重苦しい雰囲気が流れております。
 
 
 
きみと、あの男が死ねば忘れられる
 
 
 あの男というのはもちろんオーギュストです。
 
三年前に何があったのか。
 
 
 
ジュールは家が没落し子供の頃からロスマリネ家で養育されました。
 
 だから二人は兄弟のように育ったんですが、ロスマリネは苦労知らずのお坊っちゃんでジュールを家来かなんかだと勘違いしてるような所もありました。
 
何でも自分の思い通りになるとは限らないって事を早く学んで欲しいもんです。
 
 
 
 
 ゴクリ
 
 
で、ジルベールの煽動で再びセルジュに襲いかかろうとする奴ら。
 
ブロウなんか面白がって鞭を持ち出して来て振り回したりして、暴力がエスカレートし非常に危険な現場となってきます。
 
必死で逃げ回ったセルジュもとうとう椅子でぶん殴られて気を失ってしまうのです。
 
 
 
倒れたセルジュを囲み何をしようと言うのか!
 
 
 
セルジュ只今ズボンを脱がされております・・・
 
 
 
 
 
 
 
 ホウって!
 
感心してる?
 
男性がこういう顔をする時は、アレですか?大きさ?
 
えーと、わかんない。
 
とにかく敬意を表したっていう事で(笑)
 
 
 
そんで、どんなにいたぶられてもひるまず果敢に抵抗しようとするセルジュにレオがまず根負けします。
 
 
 
 潔く負けを認め謝罪するレオ
 
 
散々やりたい放題で何なん?と思うけど、とりあえずはレオの一声で美少年愛好クラブの面々は解散となり引き揚げて行きます。
 
しかしジルベールだけはその場に残ります。
 
 
 
 セルジュを見つめ一人何を思う
 
 
雨が上がり夜空には月が浮かび、シンと静まり返った部屋の窓辺でジルベールは立ち尽くしていました。
 
窓から入る月の明かりが倒れたままのセルジュの裸体を照らします。
 
ジルベールは、いつかのオーギュストの事を思い出していました。
 
 
 
 
 
───セルジュ
 
きみは十分美しい
 
きみはその美を誇るべきだ
 
 
 
 
 
そう言って、セルジュを誉めたオーギュスト。
 
 
 
 
 
そして、ジルベールは突然着ている物を脱ぎ捨てると裸になります。
 
 
朦朧とした意識の中でセルジュはその姿を天使かなんかと思うのでした。
 
 
 
 
ところがところが、落ちてた鞭を拾い上げたジルベールがセルジュを打ってくるわけです。
 
なぜか素っ裸で鞭を奪い合い争う二人の姿。
 
 
セルジュも、こうなるともうどうしたらいいのかわかんないですよ。
 
夢中で鞭を取り上げジルベールを打ち返して、怯んだ隙に外へ飛び出しました。
(とりあえずズボンだけははく)
 
 
 そこへジュールが現れて・・・
 
 
 
 
さすが参謀、尋常でない様子にすぐ何があったのかを悟ります。