風木部

溺愛「風と木の詩」

風と木の詩その33 第六章陽炎⑤

 

美少年愛好クラブの集会で暴行されジュールに保護されたセルジュ。

 

何事かと出て来たロスマリネは暗闇の中で血の匂いを嗅いで気分が悪くなりそうでした。
 
まだ電気は普及してない時代ですから夜ともなれば闇の深さは現代人には計り知れません。
 
蝋燭の灯りを近ずけて見るとセルジュ・バトゥールなのでロスマリネはびっくりです。
 
でもセルジュは意識が朦朧としていてとても話が出来るような状況ではありませんでした。
 
ジュールは闇の中でジルベールがこちらを見ている姿を目撃していましたから、ほぼほぼ何があったか察している模様。
 
恐らく集団リンチだろうと告げます。
 
 
 
 
狼狽するロスマリネ様
 
 
リンチと聞いて騒ぎ立てるロスマリネを落ち着かせるジュール。
 
この二人はほんとにいいコンビに見えますよね。
 
男ばかりの学校なんだからこういう事はサラリと通り過ぎる方がいいんだと、ジュールはロスマリネをなだめます。
 


その時セルジュが意識を取り戻し「彼が怪我をして・・・」と言いかけますが、生徒総監が目の前にいる事に気付き「ただのケンカ」だと言い直します。
 
セルジュは自分の怪我も顧みずジルベールを鞭で打ち返した事を気にしてたのです。
 
でも総監に知れてまた罰せられては可哀そうだと思って言うのをやめたのです。
 
セルジュは背中に鞭傷と額に裂傷を負い脳しんとうまで起こしていながら、ジルベールが流した血を思い出さずにはいられません。
 
裸だったからね・・・
 

 
このコマは美しいですねー
 


幻のように儚い裸体はこの世の物とは思えぬほど美しく官能的で、セルジュの胸を焦がすのです。
 
 
 
ジルベールの血は青いと、か・・・・
 
 
 




その晩はジュールのベッドをセルジュに貸し、ロスマリネもここに泊まると言うので二人はソファーで眠りました。
 
しかしロスマリネはうなされ、心に深く刻み込まれた傷に苦しめられます。
 
 
 
いよいよ明かされるロスマリネの秘密
 
 

かつてロスマリネを見舞った悪夢のような悲劇。
 
力によって支配する為にオーギュストに凌辱されていたのです。
 
(/ω\)イヤン
 
 
 
そしてその現場に偶然入って来たジュールに目撃されてしまったんです。
 
 
 
それを見た瞬間ジュールは笑ったようにも見えました
 
 
 
オーギュストほどではないけど、ジュールもまた複雑な思いを胸に抱える人物です。
 
ジュールは以前ジルベールにロスマリネとは友人ではなく支配者と被支配者の関係だと言った事がありました。
 
家が没落して困窮しているジュールはロスマリネ家の経済的援助が必要不可欠だったからです。
 
優等生のロスマリネに対して、不良学生に顔がきくジュールは全てを押し隠して「参謀」に甘んじ、裏で暗躍してきました。
 
ロスマリネを操ってやろうと思ってたのですが、そこにはジュールのロスマリネへの愛情と憎しみが複雑に絡み合った感情があるんです。
 
人は自分にないものを持つ人に惹かれてしまうものです。
 
 
 
うなされる王子
 
 
でもロスマリネだって馬鹿ではないからジュールに対して何か不穏なものを感じてたと思うんですよね。
 
だから夢でジュールがオーギュストと同じ目で自分を見ていたなんてうなされるんですよ。
 
とは言え、苦労知らずの王子様だから取るに足らない事だと重要視してないんでしょうね。
 
ジュールは使えるし、自分なら使いこなせるぐらいの感覚でいたら、実は自分が操られてたなんてシャレにもなりませんが、オーギュストに対しても同じ事ですよね。
 
自分の野心の為に牛耳ってやれと思ってたら、怒りを買ってお仕置きされちゃって。
 
あんな怖い人に勝てるわけないっつーの。
 
 


さて、そんな一杯一杯のロスマリネにとってセルジュが癒しとなります。
 
悪い夢にうなされるロスマリネを心配して起きて来たのです。
 
ロスマリネはもう病的な潔癖症だから他人に触れられるのが嫌なのね。
 
気付くと胸元が緩めてあって、それはセルジュがやったんだけど「そんなにギュッと体を締め付けたままで眠るから悪い夢を見るんですよ」ってモジモジしながら言うんです。
 
 
 
 


ロスマリネは無理して自分自身を抑圧してるから、バランスが崩れて潔癖症になってしまったんじゃないでしょうか。
 
屈辱だと思わないのか?とセルジュに問いかけた言葉は、自分自身の事なんです。
 
セルジュはそれに対して実に素直に心を語りました。
 
それに、すぐカッとなって売られたケンカを買ってしまい言わなくてもいい一言を言ってしまうので相手に悪いと、自分の不始末だとも言うんです。
 
こんなに心の底から純粋に自分をさらけ出す人はロスマリネは初めてなのかもしれません。
 
それにセルジュの持つ暖かい人柄も感じたはずです。
 
 
 
ロスマリネの中で何かが変わった瞬間
 


震える手で握手を求めるロスマリネ・・・・
 


親友だと言われているジュールとの間柄でも、本当に心の底から思いを打ち明けたり受け入れたりする関係性ではないんですよね。
 
他人と握手するなんて恐怖以外の何物でもないだろうに。
 
セルジュとの自然で暖かな出会いは、ロスマリネにとってそれほどの心の触れ合いだったようです。
 
 
 
眠った振りをしてお見通しのジュール
 

ジュールも驚いたでしょうね~
 
なんでもよく見抜いているジュールですが、ロスマリネの変化を目の前にしてセルジュはジルベールにとって危険だと考え始めました。
 
 
 
 


さて、その翌日です。
 
 


噂が駆け巡るのは早いですねぇ。
 
A棟監督生のジュールから報告を受けたワッツ先生からもセルジュは叱られてしまいました。
 
そして「昨夜の事はもうすっかり知れ渡っているから覚悟しろよ」と釘をさされます。
 
「だが雑音に耳を貸すな、自分の目と耳と心で知った事だけを大事にな」と激励する言葉もかけてくれました。
 

 



もお上級生に脱がされたってヒソヒソ囁かれて大変。
 
雑音は聞くなと言われたものの思った以上の騒動にセルジュは驚きます。
 
生徒たちにとってはスキャンダラスな出来事が恰好の暇つぶしなんですよね。
 
 

 
カールもサポート
 


ほんとにセルジュは強いですね。
 
周囲の雑音よりも、昨日のジルベールが終始冷たい目でただ見つめていた事が思い出されてセルジュの心は曇ります。
 
カールの激励も上の空で図書室に行ってしまったので、カールはちょっと寂しそうです。
 



たかがあの位の事で、と思いながらもジルベールの事が頭から離れないセルジュ。
 
これまでの事が色々と思い出されてセルジュは図書室で物思いに耽ってしまいました。
 
 
そこへ───
 
王子登場
 


今回はロスマリネ回ですねえ。


 
生徒総監がお出ましとあって図書室はシーンと水を打ったような静けさです。
 
みんなの目は二人にそそがれます。
 
ロスマリネが「話しがあるから時間をさいてもらえるだろうね」と言うと、セルジュは朗らかに応じ「昨晩は本当にお世話になりました」
と笑うので、みんなビックリしてしまいます。
 
きっと取り調べだから、厳しくやられてあいつ泣き顔で戻ってくるぞと言い合います。
 
生徒総監て実に恐れられてますねー。
 
 
 
思わずセルジュに触った手を引っ込める
 

えー、今セルジュに触ったぞ!と回りはざわめいています。
 
うるさいので人のいない場所へ移動し「話って何ですか?」と言うセルジュ(物怖じしないね)にオーギュスト・ボウとの関係を聞いてきます。
 
実は今朝、セルジュにオーギュストが面会を申し込んで来ていたのです。
 
以前のように叔母の話ではなく、セルジュ自身に話があると言うので不信に思ったロスマリネが聞きに来たわけなんです。
 
しかしロスマリネが満足するような回答は得られず、セルジュ自身は単にジルベールと同室だから親切にしてくれるだけだと答えます。
 


 
横顔も麗しいロスマリネ
 


まったくね。

仰る通りだ。

 
でもセルジュにはそんな気はなくても向こうから来るんだもんね。
 
 


そんなわけで、院長室に呼び出されたセルジュが行ってみるとオーギュストが腕を広げてウェルカムって待ってるわけですよ。
 
もー君とは親しい友人だからさんはいらないよつって抱きしめてくるわけ。
 
だからって呼び捨ては出来んだろ。
 




セルジュ困惑!!